恥ずかしい寝言
俺とオリアクスの話が終わった時、寝室として使っている倉庫から、ソフィアとルルが出てきた。二人はなんだか親密そうに話し、クスクスと笑いあっている。
「とっておきの紅茶、ありがとうございました。とても美味しいかったです。またいろいろお菓子を持ってお邪魔しますね」
ソフィアが改めて御礼の言葉を口にすると……。
「マティアス殿下、ソフィアさん、ぜひまたいらしてくださいね」
ルルが笑顔で、ソフィアと俺を見る。
「兄上、今日は本当にありがとうございました。いろいろ話せて良かったです」
「オリアクス、ルル、時間を作ってくれてありがとう。二人が書庫から出られるよう、神の力の件は対応するから」
俺の言葉にオリアクスとルルは「はい」と頷いた。
◇
書庫を出るとソフィアの手を取り、ゆっくりと歩き出した。
「ルルとは随分楽しそうに話していたな」
「はい。いろいろ話せて良かったです。夕ご飯の席でいろいろ報告しますね」
「そうだな。俺もオリアクスといろいろ話せたから、そこで報告をするよ」
ソフィアが突然ぎゅっと俺の手を握った。
「どうした、ソフィア?」
「……マティアス様が気絶されていた時のことを、話してもいいですか?」
「ああ。構わないが」
するとソフィアは、なんとも言えない表情で俺を見る。
「気絶されていたと思うのですが、マティアス様はその、寝言を口にしていたんです」
「そう、なの、か……」
「はい。とても小さな声だったので、気づいたのは私だけでしたが……」
気絶していた俺は無防備だ。
オリアクスが展開していた攪乱魔術は、無防備な俺に、間違いなく作用していたと思う。
だからこそ生々しい夢を見ていた。
そう、とんでもない夢を見ていた……。
その上で寝言を……?
あの夢に連動した寝言かと思うと……。
冷静を装いつつ、内心は……。
「ソフィア、俺は……どんな寝言を?」
ランプを手に暗い廊下を歩いていた。
だが、ソフィアの顔がバラ色に染まる気配を、ハッキリ感じる。
「それはですね、マティアス様。『何のために服を脱がそうとするんだ、ソフィア⁉』『待ってくれ、ソフィア』とか、どうも私がマティアス様に、いけないことをしているような寝言でした」
「……!」
思わずソフィアの手をぎゅっと握る。
「ソフィア、その、あの時は攪乱魔術の影響を受けていて……」
「そうだと思います。気絶していれば無防備になります。魔術の影響をダイレクトに受けますよね」
「……」
「……どんな夢だったのですか、マティアス様?」
ソフィアが俺を見上げる。
これはかなり恥ずかしい……。
ぽつり、ぽつりとその夢について話す。
いつもは夢なんてすぐに忘れてしまうのに、魔術の影響か、ハッキリと覚えている。
話終えた時、丁度王宮図書館の外に着いていた。
「……なるほど。マティアス様の夢の中の私は、随分と積極的ですね」
ソフィアは困ったように微笑む。
「あくまで夢だ。本来のソフィアとは関係ない。だから……忘れてくれ」
「はい」
「……ではシャックス家へ戻ろう」
ソフィアの手を取り、俺は翼を広げた。
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次回更新タイトルは「書庫で気絶した時の夢が、再現されていく」です。
明日もまた読みに来ていただけると大変嬉しく思います。
それでは明日も勉強、お仕事、頑張りましょう‼




