本当はずっと……
「自分にとって兄上は、完璧な魔王でした。先代の魔王……父上のことを知らないので、自分にとって魔王は、兄上、ただ一人。ですから他の魔王と比較はできませんが、それでも、兄上は完璧に思えました。天界との戦を指揮しながら、内政にも取り組んでいた。先代魔王は戦のみで、内政などそっちのけだったと聞いています。
対して兄上は、時に和平や人質交換の交渉を行いました。ソフィアさんと共に、捕虜の天使に対する、画期的な施策も実施されて……。停戦の間は魔界に活気が戻り、夜会や村で様々なイベントも行われ、本当に楽しかったです。兄上の治世を生きることができ、心から良かったと思っていました。でもずっと心配でした。兄上は自分のことより魔界を優先し、自分の幸せを置いてきぼりにしているのではと」
そんな風にオリアクスが考えていたとは……。
「兄上、怒らないで聞いてください。……ソフィアさんに、自分は想いを寄せていた時期もありました。ルルがいるのに。それぐらいソフィアさんは魅力的でした。そんなソフィアさんをそばに置きながら、兄上は独身を貫いている。不思議でした。でも本当はソフィアさんにゾッコンだったのですね」
……!
オリアクスがソフィアに想いを寄せていた時期があった、だと!?
……そうか。
エウリールは間違っていなかった……。
「自分はルルと婚儀を挙げようと思います。せっかく兄上も魔界にいるのですし」
……!
「それに自分が婚儀を挙げ、ルルと結ばれれば、ルルは魔王の血筋になるのですよね?」
オリアクスが少し頬を赤くして尋ねる。
「そうだ。これは魔王の一族に定められている教義だ。婚姻の儀式で二人が結ばれることで、ルルの体内には王族の魔力が流れ込むことになる。流れ込んだ魔力が体内を巡ることで、ルルは王族の魔力を手に入れることになる。つまり、ルルは魔王の血筋となるわけだ」
「ということは兄上、ルルも人間になった悪魔を、元に戻すことができるのですね?」
俺は頷いた。
「ではルルにも手伝ってもらえますね」
オリアクスが笑顔で俺を見る。
「……そうだな。でもそのためには、地上へルルも降りなければならない。だがルルは地上を怖いと思っているのだろう?」
「そうですね……」
オリアクスが困ったという顔をする。
「今、ルルはソフィアと話している。ソフィアは俺と地上で暮らしていた。その時の話をルルに聞かせている。もしかするとルルはその話を聞いて、地上に対する考えが変わるかもしれない」
「……! そうですか。ルルの意識が変わってくれれば……」
「地上に降りる時は俺やソフィアもついて行くし、エウリールも……大天使ウリエルが護衛に着く。ウリエルがいればまず人間は俺達に近づけない。地上にいるはぐれ悪魔でも、ウリエルの名を知らない者はいない。死にたくなければウリエルには……俺達には近づかないだろう。悪魔狩りの天使が現れても、ウリエルがいれば手出しはできない。だからもしルルがはぐれ悪魔に襲われることや、悪魔狩りを恐れているなら、その心配はないと伝えて欲しい」
オリアクスが力強く頷いた。
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次回更新タイトルは「恥ずかしい寝言」です。
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それでは明日も勉強、お仕事、頑張りましょう‼




