弟の考え・兄の想い
食後、俺とソフィアは山ほどのお菓子を持って書庫を訪れた。
ルルはお菓子の差し入れを喜び、とっておきだという紅茶をいれてくれた。そしてソフィアとルルは寝室として使っている書庫の中の倉庫に、俺とオリアクスは閲覧席で、それぞれ話をした。
結果的に、オリアクスとじっくり話せて良かったと思っている。
まず、オリアクスがルルと婚儀を挙げていないなのが、俺のせいだったことが明らかになったからだ。
最初、オリアクスは本音を明かさず「なんとなくまだ身をかためたくなくて」とか「将来どうなるか分からないので踏み切れない」と言っていたのだが……。
「そうか。婚儀を挙げるには将来が不安で、そして一人の女悪魔に縛られるのがまだ不安なのか。……それは俺と全く逆だな」
俺がそう漏らすと、オリアクスは驚いた顔をする。
「兄上、逆、というのはどういうことですか?」
「オリアクスにはまだ話していなかったな。……さっき俺がソフィアに襲いかかったが、あれは魔術の作用による暴走もあったが、俺自身があの瞬間、ソフィアを抱きたいと思っていた」
「⁉ あ、兄上、それは……」
オリアクスは赤面している。
「俺はずっとソフィアのことを愛していた。千年前から。オリアクス、俺は戦の最中、ガブリエルの矢を翼に受け、地上へ堕ちたことがある。そこで、俺は人間だったソフィアと出会った」
オリアクスにはまだ話していなかったソフィアとの出会いと別れ、再会、それに協力してくれたのがエウリール……ウリエルだったことなどを話した。
オリアクスはこの話を聞いて、しばらくは驚きで言葉が出ない。
「……そうだったのですね、兄上。先ほど、『ただソフィアと幸せになり、生きることを願っている』と仰っていたのは、愛するソフィアと幸せに生きていきたい、ということだったのですね」
俺は頷く。
「天界では、天使同士の婚姻のために神殿が用意されている。その神殿で婚儀を挙げることで、婚姻したと認められるんだ。俺はソフィアとその神殿で婚儀を挙げようとして、ガブリエルに何度も邪魔され、今回はミカエルにまで止められた。まあ、ミカエルは意地悪で邪魔をしたわけではないが、婚儀を挙げられなかったのは事実だ」
「兄上、それは……。災難でしたね」
「ああ。俺はソフィア以外の相手との婚姻は考えられない。将来に何があろうとソフィアを手放すつもりがなければ、離れるつもりもない。この先の永遠の命を、ソフィアと生きると決めている。だから今は、一日も早くソフィアと婚儀を挙げたいと思っている」
俺の話を聞いたオリアクスは、心から安堵した顔でこう切り出した。
「兄上、今の話を聞いて、心底安心できました。……実は、自分の勝手な思い込みで、兄上が王妃を迎えないのに、ルルと婚儀を挙げるのは失礼になるのではと、ずっと思っていたんです」
「!? そうなのか?」
オリアクスは深く頷く。
「本当は……ルルと婚儀を挙げたいと、ずっと思っていました」
「そう、だったのか……。俺のせいで……すまない」
「いえ、兄上、あやまらないでください。自分の勝手な思い込みで、婚儀を挙げないでいたのですから。本当は自分から兄上に、こうやって話をする機会を作ればよかったわけで」
オリアクスはそう言うと俺を見上げた。
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次回更新タイトルは「本当はずっと……」です。
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