逃れようとするソフィアの動きを封じ……
書庫は、鍵と俺の名乗りで簡単に開いた。
開いたはいいが、中は当然真っ暗。
壁に沿って設置されているランプに、順に火をつけていく。
「マティアス様、こちらの書庫、過去にいらしたことは?」
「ある……はずだが、俺の記憶とは違っているような……」
書庫、となっているが、本より巻物の類の方が圧倒的に多い。
だから図書館にあるような背の高い棚ではなく、三段ほどの高さの棚がいくつも置かれていたのだが。その位置が、俺の記憶とは微妙に違っているように感じる。
それに……。
何だろう。
ランプの明かりはすべて灯したのに、闇が深い……。
俺が天使なのだから仕方がないのかもしれない。
そしてここが太陽の光が一切届かない地下だからかもしれない。
とにかく違和感を覚えていた。
「あ、ここにも目録がありますね」
そう言ってソフィアが通路を進んだその瞬間。
「……!」
躓き、転びそうになったソフィアの腕を引っ張り、自分の胸の中に庇った。
そしてそのまま、背中から床に倒れこむ。
「マティアス様、すみません! 大丈夫ですか!?」
ソフィアはすぐに、体を起こそうとする。
こんな体勢になるのは、初めてのことだった。
ベッドではいつも逆の体勢だ。
ソフィアがベッドに横になり、俺がその体を覆うようにして、キスをしたり抱きしめたりをしていた。
でも今、俺が下になり、ソフィアは上から俺を覗き込んでいる。
胸元が大きく開いたドレスからは、どうしても魅惑的な谷間が見えてしまっている。
もう衝動的にその体を抱き寄せていた。
マシュマロのようなとろける感触に、俺の心臓は激しく反応する。
と同時に何かがさらに俺を突き動かす。
それに合わせたかのように、呼吸が急速に荒くなり、全身でソフィアを求めてしまう。
「マ、マティアス様、落ち着いてください!」
懸命に逃れようとするソフィアの動きを封じ、その首筋に唇を押し当てていた。
「マティアス様、ダメです!」
ソフィアが力任せで身をよじる。
もつれあうように動いた結果、ソフィアが床に横たわり、俺が覆いかぶさる、いつもの体勢になった。
泣きそうなソフィアの顔を見て、脳の中でもやもや渦巻く何かが、霧のように消えていく。
その瞬間、俺は我に返ったのだが。
ソフィアの瞳が大きく見開かれ、さらに口も大きく開いて何かを叫び、腕が伸ばされるのが、スローモーションのように見える。
と同時に後頭部に鈍い痛みを感じ、俺は意識を失った。
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次回更新タイトルは「何のために服を脱がそうとする?」です。
明日もまた読みに来ていただけると大変嬉しく思います。
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