その瞬間、俺達三人は同じことを考えていた
「もしそれでその元悪魔の人間が死ねば、天界に召されるかもしれない。だがな、そうなればそれはつまり、その料理を食べさせた者は、主の裁きを受けるということだ。白い炎に焼かれ、お終いだ。『神の家』に来た元悪魔の人間が、勝手に天界の食べ物を口にした、そうならないのか、と考えるなよ。元悪魔の人間が、天界の食べ物を口にすれば死に至る可能性がある。それなのに『神の家』に招き、天界の食べ物を口にできるような状況を作り、それを止めなければ……それは殺意ありと見なされ、招いた者が、主による裁きを受けることになる」
思わず絶句したが、すかさず尋ねていた。
「それを言うなら、俺は元魔王で悪魔だ。そして『神の家』で、天界の食べ物を口にすることになった。死に至る可能性はゼロではなかったはず。ラファエルは、白い炎に焼かれるリスクを負ったということか?」
するとエウリールは笑っていた。
「マティアスが天界の食べ物ぐらいでは死なないと、ラファエルは分かっていたんだろうな。なぜならお前は、一撃必殺と言われたガブリエルの矢を受けても、なお死ななかった。煮ても焼いても簡単に死なないと、ラファエルは確信したのだろう」
……本当に大天使は……。賢いのか? いや、悪知恵が働いているだけだろう。
「あの……」
ずっと黙っていたソフィアが口を開いた。
「マティアス様、エウリール。主が、元悪魔の人間を、天使として天界に迎えるには、どうしても『死』がつきまといます。言わば『死』と引き換えになるようなもの。主がそんな方法をとるとは思えません。そうなるとやはり、天使として迎えるのは……無理だと思います。つまり人間になった悪魔を元の姿に戻し、再び魔界へ戻す。これが現実的な方法だと思います。でもその方法は、主にはできない……。主ができることは、魔界に満ちる神の力を弱め、戻った悪魔が再び魔界で生活できるようにする。それぐらいではないでしょうか」
ソフィアの指摘は正しい。
俺もエウリールも腕組みをして考え込む。
「……エウリール、天使の俺は、魔王に戻れるのか?」
「それは……悪魔にはなれるかもしれないが、魔王になれるかは……。しかもあれだぞ、悪魔になるにも、純血種の魔王の血筋がいないのだから……、純血種の悪魔とお前が交わる必要があるんだぞ」
エウリールがチラッとソフィアを見る。
ソフィアの顔から表情が消えていた。
「それは無理だな。俺はソフィア以外と関係を持つつもりはない。ならば純血種の魔王の血筋を見つけ出し……」
その瞬間、俺達三人は同じことを考えていたようだ。
一斉にこう叫んでいた。
「オリアクス」
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次回更新タイトルは「思い立ったら即実行」です。
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