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完結●千年片想い~ピュアな魔王の純愛記~  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【Episode3】魔界大騒動

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整えたベッドを危うく乱すところだった

部屋に戻ると、昨晩ソフィアが言っていた通りの片づけを、手分けして行った。


ベッドメイキングをしていると、エミリアの店を手伝っていた時のことが思い出される。


あの頃はまだ家事に不慣れで、特にソフィアは料理が全然できなくて、手に沢山の傷を作っていた。その時のことを思い出すと笑みがこぼれ、そしてどうしても気持ちが抑えきれなくなってしまう。


「ソフィア」


その名を呼び、抱き寄せる。


「どうしたのですか、マティアス様? もう出発ですよね⁉」


「この後は、魔界までずっと飛行を続けることになる。だから……」


「……そうですね。こんなことはできませんもんね」


瞼を閉じたソフィアが顔をあげる。


「……!」


ワインのほろ酔いが続いている……わけはなかった。


でもエウリールが「マティアスをこれ以上お預け状態にしたら、狂いそうだからな」などと暴言を吐いて以降、少しずつではあるがソフィアが変わってきている。


これまでも俺が求めれば、それを拒むことはなかった。


でもあの日以降は、俺が求めると、それに自分からも応えてくれるようになっていた。


俺だけが一方的に求めているわけではない。

ソフィアも同じ気持ちなのだと実感できた。


気持ちが通じ合っていると分かるだけで、ソフィアへの気持ちがさらに強まる。


だから瞼を閉じ、顔をあげたソフィアに、情熱的なキスで応えていた。


本当は出発前に抱きしめ、軽いキスを交わせればという気持ちだった。


だがあんな風にされたら……。

そんな軽いキスで終わるわけはなく。

あやうく整えたばかりのベッドを、乱すところだった。


そこはお互いに踏みとどまり、踏みとどまれたことを喜び合い、そして笑顔で手をつないで部屋を出た。



集合場所の一階に降りると、エウリールはカウンター越しにアンジェリカと話をしている。


エウリールは俺たちが降りてきたことに気づくと、アンジェリカにチークキスをして、何かを渡していた。


アンジェリカは手の平に載せられたものを見て驚き、そして腕を伸ばすと、エウリールの顔を引き寄せた。そして二人は……。


思わずソフィアの肩を抱き、階段の壁に飾られた絵を指差す。


「ソフィア、この絵、どう思う?」


突然のことにソフィアは驚き、でも真剣に絵を眺める。


「⁉ ……そうですね……。多分、羊……ですかね?」


ハッとしてその絵を見た。


適当に指差したその絵は抽象画で、何を描いているのか、理解に苦しむものだった。


白くもこもことしたものは、確かに羊には見えなくはないが……。


「おーい、マティアス、ソフィア、何しているんだ? 行くぞ」


エウリールに呼ばれ、ホッとしながら、ソフィアを促し階段を降りた。



魔界への飛行を開始し、少し離れた場所を飛ぶエウリールの姿をチラッと眺める。


アンジェリカもそうだが、エウリールが関係を持っている女性は相当な数のはずだ。


レイラが純真無垢過ぎた反動。

レイラのいない悲しみを埋めるため。

理由はいろいろあるのだろうが……。


ソフィア以外を考えられない俺からすると、エウリールの行動は理解の範疇を超えている。


地上ではただの人間だが、ここ天界では大天使だと言うのに。


沢山の愛人と関係を持っていた母親に、俺は嫌悪感を覚え、毛嫌いしていた。それなのにエウリールに対しては、嫌悪感も覚えることはなかったし、毛嫌いすることもなかった。むしろ好ましく感じている。


だから。


エウリールには幸せになって欲しかった。

レイラの魂が再び天界に戻ることを、心から願った。

昨日に続き来訪いただけた方、ありがとうございます!

この投稿を新たに見つけていただけた方も、ありがとうございます!


次回更新タイトルは「たったの三年でも待ちきれなかった」です。


【サプライズ企画スタート】

本作の登場人物が活躍する新作の連載が

本日の20時からスタートしています。


『悪役令嬢ポジションで転生してしまったようです』

https://ncode.syosetu.com/n6337ia/


主人公は乙女ゲーム『千年片想い』の世界にまさかの転生。

イケメン大天使に囲まれ、果たしてこの先、主人公の運命やいかに!?


明日もまた読みに来ていただけると大変嬉しく思います。

それでは明日も勉強、お仕事、頑張りましょう‼

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