ミカエルの意図
「最近、魔界へ行った天使は誰かいるのか?」
エウリールは苦笑する。
「いるわけないさ。いくら清められ、神の力が満ちていようと、そこは魔界だった場所だ。天使なら本能的に嫌悪感を覚える。近づきたいとは思わない」
それはそうだろう。だが……。
「そう言われると、疑問が募るな。今も魔界に住み続ける天使がいる理由が、なおのこと分からなくなる。それに魔界を訪れた天使もいないのに、ミカエルはどうやって魔界で予期せぬ事態が起きていると分かったんだ? 今も魔界にいる天使が報告したのか? それならその天使に何が起きたか聞けばいいだろう? 俺を派遣するまでもない。でも俺が動かされているということは……魔界にいる天使が報告した、これは正解ではない」
「とりあえずマティアス、ミカエルの件は簡単だ。アイツにはすべての出来事を感知できる力がある」
「なんだその力は?」
思わず眉をしかめる。
「言葉通りさ、マティアス。ミカエルは主に代わり、天界・魔界・地上で起きる出来ることを感知している。まあ、魔界はお前が魔王として君臨している時は、魔力が満ちていたし、感知できなかった。でも今、魔界は神の力で満ちているからな。感知も可能だ。アリのくしゃみさえ感知できる」
「アリはくしゃみをするのですか、エウリール?」
ソフィアが真面目な顔で尋ねると、エウリールは朗らかに笑う。
「分かりやすく例えただけだよ。ほんの些細なことも感知している、ということを」
「なるほどです」
ソフィアは頷くと、最後の一粒となる葡萄を頬張った。
「でも全てを感知していたら身がもたないだろうし、何もできなくなる。だから知りたい、と思うことにフォーカスして感知しているのが実際のところだろう。ただ、感知はできるが、詳細まですべて把握できるわけじゃない。だから何か起きている、これは確認した方がいい、となると、騎士を派遣するのさ」
いやでも分かってしまった。
なぜ俺がミカエルに魔界へ行くように言われたのか、その理由を。
「お、マティアスのその表情。すべて理解した感じか?」
「ああ。ミカエルはガブリエルのように嫌がらせで俺を魔界へ向かわせたわけではない。いくら清められ、神の力が満ちても、魔界へ行きたがる天使はいない。そして俺は『天界軍騎士総本部』で、騎士として登録を行っていた。俺はミカエルにとって都合のいい駒だった」
エウリールは正解と示すように、ニヤリと笑う。
「さらに言えば、魔界で何かが起きているのに、そこにいる天使はそれを報告していない。それは本当に主にとってもミカエルにとっても理解できない事態なんだろうな。そしてその事態の解明には、魔界を知る者が必要だったのでは?」
「おっとそこまでの推理、おれはしていなかった。だが、それは一理あるな。なんだか魔界に行くのが楽しみになってきたな、マティアス」
「まったくそんなことはない。ただ、とっとすべて終わらせたい。準備をすすめよう」
この言葉を合図に、エウリールもソフィアも席を立った。
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次回更新タイトルは「整えたベッドを危うく乱すところだった」です。
1点お知らせです。
初の悪役令嬢ものを本日11時に公開しました!
『悪役令嬢完璧回避プランのはずが色々設定が違ってきています』
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コミカル、時にホロリ、途中から甘々溺愛展開。
個性あふれる登場人物にイケメン率高!
お昼休みやランチタイム
通勤次学でお楽しみいただけると幸いです。
まずは開店祝い(?)でのぞきにきていただけると幸いです。
それでは明日も勉強、お仕事、頑張りましょう‼




