二人はどんな関係?
丸ごとじゃがオリーブ、アヒージョ、ニンジンスープ、焼き立てパン。そして赤ワイン。
すべて美味しかった。
久々にワインを飲んだソフィアは、顔や首、胸元もほんのりバラ色に染まっている。
その姿を見ていると、ついゾクゾクしてしまう。
今すぐにでも抱き上げ、ベッドに連れて行きたい……。
わき上がる衝動を抑えるため、パンをいくつも頬張ることになった。
それにしても。
婚儀を邪魔され、魔界へ行くことになった時、大天使に翻弄されることにウンザリしていた。
だがエウリールが同行し、このオリーブ酒場で美味しい料理とワインを味わっていると……。
気持ちはとても晴れやかだ。
俺たちはよく笑い、よく食べ、よく話し、そして夜は更けていった。
◇
「そろそろ部屋に行くか」
エウリールに促され、二階へ向かうと、そこにはズラリと部屋が並んでいる。
「マティアス様、208号室、ここです」
鍵はないので、押せばドアは簡単に開いた。
こじんまりしているが、清潔感のある可愛らしい部屋だった。
壁紙は花柄。天蓋付きのベッドは、確かに枕も掛布団も、見るからにふかふかそうだ。窓の前には、テーブルと向かい合わせに一人掛けのソファ。クローゼットには寝間着と明日の朝に着るためのキトンが用意されていた。
バスルームに行くと、猫足のバスタブにたっぷりのお湯がはられ、入浴剤も用意されている。ふかふかのバスタオルも、ちゃんと置かれていた。
「明日の朝、シーツやカバーを替え、新しいタオルとキトンをランドリールームからとってくる。後は簡単に掃除をする。それで無料でここに泊れるってすごいですね」
ソフィアは、部屋の案内が書かれた紙を読み、俺を見る。
「ソフィアは地上の感覚が抜けないな」
「ふふ。確かにそうですね」
微笑んだソフィアが、不意に俺に抱きついた。
「マティアス様、寝る準備をしましょう。あのふかふかのベッドに、早く横になりたいです」
……!
ソフィア、ほろ酔いだからか?
でもこんな風に甘えられると……。
もうこのままベッドに行こうと誘いそうになるのを抑え、ソフィアのおでこにキスをして「先にお風呂に入っておいで」と、甘く囁く。
ソフィアは「はい」と返事をすると、俺の頬にキスをして、バスルームへ向かった。
その姿を見送ると……。
ソフィアにキスをされた頬に指で触れ、胸をときめかせていた。
◇
風呂上りに冷たい水があるといいだろうと思い、部屋を出て一階へ向かう。
すると。
あんなに賑わっていたのに、既に電気が落とされ、フロアにも厨房にも誰もいなかった。
基本的にセルフサービスに近いから、あっという間に片付くのか。
そんなことを思いながら、冷蔵庫からボトルに入った水を取り出し、グラスを二つ、ボトルに被せた。
そうだ、エウリールにも持っていってやろう。
もう一つボトルを取り出した。
二階に着くと、エウリールの部屋、209号室のドアを押した。
「エウリール」
そう言いながら部屋に入り、俺は固まった。
不自然に盛り上がった掛布団、そこに横たわるアンジェリカ、彼女に覆いかぶさるようにウリエルが見える。床には二枚のキトンが落ちていた。
「あ、いや、その、水を」
テーブルにグラスをのせたボトルを置き、一目散に部屋を出た。
⁉
頭の中が混乱している。
アンジェリカとエウリールはそういう関係なのか?
でもここは地上じゃない。
天界だ。
もしかしてアンジェリカとエウリールは婚姻関係にあるのか……?
いや、でも美術館にエウリールの婚儀の絵はなかった。
それに二人とも指輪をつけているわけでもないし……。
俺は自分の部屋に戻ると、ボトルをテーブルに置き、ソファに座った。
もしかして大天使は、婚姻関係なしでも、女性の天使と関係を持てるのか……?
それともここまで俺たちのことを連れてきたから、もう地上へ堕ちるつもりでいる?
いくら考えても答えは出ない。
そうしているうちにソフィアが、バスルームから出てきた。
ソフィアに水をすすめると、このもやもやも洗い流すべくバスルームに向かった。
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次回更新タイトルは「見たかったし、触れたかった」です。
明日もまた読みに来ていただけると大変嬉しく思います。
それでは明日も勉強、お仕事、頑張りましょう‼




