オリーブの酒場
オリーブの酒場、そこは辺境の地にあるイメージだったが、そんなことはなかった。
店に入ると、そこに沢山の天使がいる。
「この近くに天使軍の拠点もある。もう魔界との戦もないし、ここにそんなに騎士を配備する必要はないのだが、ここも一つの街として出来上がっているからな。騎士以外の天使の暮らしを守るためにも、ここに天使軍の拠点は残るし、街の賑わいが衰えることはない」
エウリールは店の奥に進み、カウンターで元気よく動く一人の女天使に、声をかけた。
「あら、ウリエル! 久しぶり、元気にやっていたかしら?」
そう言って笑顔を見せる女天使は、アクラシエルと同じストロベリーブロンドの長い髪をポニーテールにし、首元には薔薇の形の宝石のついたペンダントをつけている。
瞳は焦げ茶色で、口紅をつけているのだろうか。唇は艶のあるストロベリー色をしている。
俺たちのいた街では装飾品をつけたり、化粧をしたりしている女天使を見かけなかったので、新鮮だった。
「ああ、今日、地上に戻ったばかりだ。アンジェリカに会いたくて、ここまで来たんだよ」
アンジェリカは「あら~、そうなの」と、カウンターに肘をつき、このままエウリールとキスをするんじゃないかという距離まで顔を近づけたが……。
「どうせ魔界へ向かう途中なんでしょ。ということは、宿を一泊ね。そちらにいる二人と一緒よね? 部屋割りは? 二部屋用意すればいいかしら?」
アンジェリカはソフィアの左手の、俺の贈った指輪をチラッと見ている。
「つれないなぁ、アンジェリカ。……部屋は二つで頼むよ。おれと、そこにいるマティアスとソフィアで、それぞれ一部屋ずつだ」
エウリールの返事を聞いたアンジェリカは、カウンターから体を起こし、俺とソフィアを見て微笑んだ。
「はーい、マティアスにソフィア。オリーブの酒場へようこそ! ふかふかのベッドと温かいお風呂はちゃんと用意しておくから、この酒場ではお腹いっぱいに食べて頂戴ね。おススメは、丸ごとじゃがオリーブ。ほくほくのじゃがいもに岩塩とオリーブオイルをかけたものよ。絶品よ。それとマッシュルームとブロッコリーのアヒージョ。これは胡椒と唐辛子がアクセントでクセになるわよ。あとはニンジンのスープね。ピューレしたニンジンがたっぷり入っているわよ」
「アンジェリカ、それ全部頼むよ。あとは焼き立てパンと赤ワインだ」
ソフィアと俺が顔を見合わせている間に、エウリールが即答する。
「オーケー。じゃあ席は適当にね」
ウリエルにそう言うと、アンジェリカは厨房に注文を入れに行った。
「マティアス、ソフィア、こっち」
丁度あいていたテーブル席にソフィアと俺を案内すると、エウリールはカウンター横の冷蔵庫に向かう。そこからボトルのワインを取り出し、カウンターに吊るされていたグラスを取ると、席に戻った。
「ルールはどこも同じだ。何かを得るには何かをする。というわけでソフィアはそこのオーブンでパンを焼いてもってきてくれ。マティアスはアンジェリカに呼ばれたら、料理を受け取ってくれ」
「分かった」
俺たちはそれぞれちょっとした『役割』を果たし、料理とワインを手に入れた。
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次回更新タイトルは「二人はどんな関係?」です。
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