お前に抱かれたがってうずうずしているぞ
天界に戻ると、いつものように女の天使……神官が俺たちに近づいた。
が。
俺たちは悪魔を一体も狩っていない。
だから神官は「お疲れさまでした。次回の活躍をお祈りしています」と言い、武器だけ預かり、去って行く。
神官が去り、少し進むと、そこにはラファエルがいた。
アクラシエルを見ると、少女のような笑顔を向けて駆け出す。
二人は抱き合うと、そのままキスをした。
いろいろあったラファエルのそんな姿を見るのは気恥ずかしく、思わす視線を逸らす。
だが言わなければいけない。
二人の熱い抱擁が落ち着いたとろこで、ラファエルに声をかける。
「ラファエル、さっきは俺を庇ってくれて、ありがとう」
ラファエルは穏やかな笑顔を浮かべた。
「これで過去の遺恨はなかったことに、とはとても言えないが、マティアス、君を救えてよかったよ。でも君を助けることが、自分の救済につながるとまでは思っていなかった。あの時はただ無我夢中だったからね。
私がマティアス、君に放った天使の力は、加減したものだ。あくまでソフィアちゃんの封印を解くためのもの。でも今回はガブリエルの矢だ。大天使が放つ矢は一撃必殺。しかも必中だ。悪魔にとっては即死だが、私は大天使だし、即死は免れる……そう思って庇っていた。
自分が人間に堕とされていることを……あの瞬間忘れていた。純粋にマティアスを助けようと動いた私を、主は認めてくれた。こんなにも早く復権できると思わなかったよ。それもこれもマティアス、君が地上へ来てくれたおかげだ。感謝しているよ。
そして……悪魔に対する考えも、これからは少し改めようと思う。悪魔が敵である。それは変わらない。だが、もっと悪魔の本質を見て判断しようと思う。マティアスのような善良な悪魔ではないか、それを確認しようと思うよ」
ソフィアを救済すると豪語していた時のラファエルとは、別人だ。
あの時は俺を、蔑むような目で見ていた。
でも今は違う。
「互いの命を守りあった。過去の遺恨は乗り越えられたんじゃないか? ソフィアだって、とっくにお前のことを許しているし」
同意を示すように、ソフィアが頷く。
「俺から言えることはただ一つ。ラファエル、もうアクラシエルと離れ離れになるようなことはするな」
ラファエルは頷くと、アクラシエルを見る。
アクラシエルはラファエルの頭を撫でると、そのままキスをした。
! 慌てて視線を逸らす。
一応大天使だっていうのに、この二人は、イチャイチャしすぎじゃないか⁉
「それでガブリエルとアリエルは、お前と入れ替わりで、本当に地上に堕ちたんだな?」
二人から視線を逸らしたまま尋ねる。念押しでの確認だ。
「ああ、そうだよ。不幸中の幸いだったのは、私と違い、二人揃って地上へ堕ちることができた……ということかな。しかし、私のみならず、ガブリエルまで地上へ堕とされるとは……。ミカエルの心労を思うと……」
ようやくキスが終わったかと思い、ラファエルの方を見ると、文句の一つを言うことにする。
「というか、大天使は根性を一度鍛えなおした方がいいと思うが」
「そう言われると返す言葉がないよ。確かに私がソフィアちゃんにしようとしたこと。マティアスにしてしまったこと。そのどちらもヒドイことだった。それにガブリエルが君たち二人にしたことは……。神殿の利用を邪魔しただけでなく、悪魔狩りまで強いるとは……」
そこでラファエルは言葉を切り、改めて俺を見て、こう告げた。
「マティアス、君は知っているかい? たった二回の悪魔狩りで、あれだけの悪魔を倒した。君の騎士の序列はもう将軍クラスだ」
ラファエルの指摘に、盛大なため息をつく。
「将軍なんて、くそくらえだ。俺は元々魔王なんだ。将軍なんて地位、興味なんてこれっぽっちもない」
「まあ、そういうな。将軍ともなれば、天使としての力もさらに強まっているのだから」
「そっちも興味ない。というかもう行けよ、ラファエル。アクラシエルがお前に抱かれたがってうずうずしているぞ」
ラファエルは恥ずかしがることなくアクラシエルを見て、またキスを始める。
「おい、お前ら、それは家に帰ってからやれ!」
「そうだな。アクラシエル、私の離宮へ行こう。連れて行ってくれるかい?」
ラファエルが甘えるようにアクラシエルを見た。
「もちろん」
アクラシエルはラファエルを抱き上げる。
中性的で腕力なんてなさそうなアクラシエルだったが、ちゃんとラファエルを抱き上げ、翼を広げていた。
「マティアスさん、ソフィアさん。私はしばらくラファエル様の離宮に滞在します。また戻ったら二人を尋ねますね」
「ああ」「アクラシエルさん、お幸せに」
俺とソフィアの返事を聞くと、アクラシエルはラファエルを抱きかええ、飛び立った。
「ソフィア、俺たちも帰ろう」
「そうですね」
ソフィアと手をつなぎ、家へ向かい歩き出した。
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次回更新タイトルは「まだ心の準備が出来ていないのか?」です。
明日もまた読みに来ていただけると大変嬉しく思います。
それでは明日も勉強、お仕事、頑張りましょう‼




