絶句。まさか……
ハッピーニューイヤー!今年もよろしくお願いします。
「差し支えなければお名前をいいかな。架純ちゃんが色紙を渡す時に君の名前を呼んでくれるから」
ラファエルがそう言い、マイクを少年に向ける。
ソフィアはさすがにコスプレでは架純そのものだが、声までは無理だった。だが最新のAI技術で架純の声を今回再現している。だから名前を伝えれば、一応AIではあるが、架純に名前を呼ばれながら色紙を受け取ることができた。
少年はしばし逡巡し、自分の名を告げる。
「久光です」
「久光くんだね。じゃあ、架純ちゃん、お願い」
ステージでは色紙の受け渡しが進んだ。
「ねえ、マティアスさん、久光って……」
アクラシエルが俺を見た。
「うん?」
アクラシエルを見かえす。
「え、だからマティアスさん、あの少年、久光ですよ、名前。私達が探しているのは、小笠原久光ですよね?」
……!
「まさかあの少年が小笠原久光⁉」
驚愕の思いで、架純にコスプレしたソフィアとツーショット写真を撮る、白パーカーの少年を見た。
◇
オークションイベントが終了し、小笠原久光がステージから降りると、手配通りスタッフに声をかけさせた。
ステージではphantomとMisfitが最後の曲を熱唱している。
ソフィアと共に控え室に戻った俺とアクラシエルは、小笠原久光が到着するのを待った。
正直、まだ信じられない思いの方が強い。
あの子供が小笠原久光……?
名前の偶然の一致では?
どう考えてもただの少年にしか見えない。
ほどなくして小笠原久光がスタッフに連れられ、控え室に入ってきた。
目の前にいる架純……ソフィアを見て、小笠原久光の頬がぽっと赤くなる。
「呼び立ててすまないな。話が終わったら追加の写真撮影はもちろんしてもらって構わないが、まずは話を聞いてほしい」
その瞬間、ぽっと頬を赤くしていた小笠原久光の眼光が、信じられないほど鋭くなった。
……な、なんだ、この目力は。
ただ睨まれただけで、言い知れぬ圧を感じる。
「……どういうことだ? 妖でもない。わずかだが神気を感じる。神使……?」
少年とは思えない、力強くよく通る声だ。
「岡田、黒鴉」
次の瞬間、執事の装いの長身の青年と黒スーツ姿の青年が部屋に現れた。
これは間違いない。
コイツは……エクソシスト。
コイツが小笠原久光だ……!
深呼吸して、気持ちの乱れを落ち着かせる。
少年とバカにしていたことで、気が緩んでいた。
「君はこの極東の地で噂に名高い日本のエクソシスト、陰陽師・小笠原久光で間違いないか?」
小笠原久光が目を細め、こちらを見る。
「……エクソシスト。その言い方をするということはバチカン絡みか?」
「バチカン。まあ、無関係ではないが、少し違うか」
小笠原久光は、眉をくいっとあげた。
「少し違う、か。面白い。……なるほど。わずかだが感じられる神の気配。あえて力を抑えているのか。なぜ抑える必要がある? それは人間にその姿を視認させるためだ。通常なら人が見える存在ではない。本来は地上になどいる存在ではない。まさか、な。日本で出会えるとはな」
小笠原久光はニヤリと笑う。
「……天使だな」
アクラシエルが驚いて俺を見た。
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本日は2話公開です。引き続きお楽しみください~。




