穏便に済ませる方法
「エミリアがどういう状況か確認することにした。式神として使役される、というのがどんな状態か、いまいち分からなかったからな。
すると、どこかで妖の目撃情報があればそれを確認しに行く。誰それが元気か確認して来いと言われ、様子を見に行く。妖の調伏を行う現場で、周囲に危険が及ばないか警戒する。正直、使役なんていうから、散々コキ使われるかと思ったら……。そんなこともなかった。
夜の相手をさせられるとか、セクハラ、パワハラも、一切なし。悪魔に近づいたり、人間に害をなしたりすることは、縛りで禁止されていたが、それ以外は割と自由なようだった」
エウリールの話から推察するに、品行方正であれば、エミリアは平穏無事でいられるようだ。
「なるほど。つまり取り戻すことはできないが、虐げられているわけではない。だから現状維持になったわけか」
「マティアス、決して現状維持を良しと思っているわけじゃない。でもおれも無茶をできる状況じゃないしな。苦渋の決断だよ」
大きなため息を、エウリールはもらした。
ソフィアもこの話を聞いて、どうしたものか考え込んでいる。
俺も思案を巡らせた。
日本にそんな強力なエクソシストがいるとは、知らなかった。
ヨーロッパには腕の立つエクソシストが何人かいて、彼らには関わらないよう、魔界では何度となく通達を出している。だが、極東のアジアの小さな島国は……完全にノーマークだ。
どこまで強いのか。
俺が魔王の立場であったら、この目で確かめたいと思ってしまっただろう。
だが、今は立場が立場だ。
うん、立場……俺は今、天使だ。
そうか。
「エウリール、その日本のエクソシスト――陰陽師とコンタクトはとれるのか?」
不意の俺の言葉に、エウリールは「⁉」と明らかに驚いた顔をしている。
「どういうことだ?」
「陰陽師に俺が会って、直接交渉する」
「⁉ おい、マティアス、何を言いだすかと思ったら……」
エウリールは困惑している。
「俺は今、天使だ。天使と陰陽師は、立場としては同じだろう? 陰陽師は妖を調伏する。天使は悪魔を倒す。だから、陰陽師は天使を調伏しようとは、さすがに思わないだろう」
「それはそうだが」
「俺は今、悪魔狩りのために地上へ来ている。そのことを素直にその陰陽師に話す。そしてその陰陽師が式神にした悪魔を引き取ると申し出る」
エウリールとソフィアが息を飲む様子が伝わってくる。
「これなら穏便に済むはずだ。だからエウリール、お前に聞いた。その陰陽師とコンタクトをとる方法を」
「……なるほど。確かにその方法があったか、という感じだ。コンタクトをとる方法な……。正直、奴の連絡先なんて知らんし、SNSをやっているわけもなく……。あ、一つだけ、可能性がある」
「なんだ、言ってみろ」
俺はエウリールを見た。
次回更新タイトルは「ミニスカ&ツインテールのソフィア」です。
明日もまた読みに来ていただけると大変嬉しく思います。
それでは明日も勉強、お仕事、頑張りましょう‼




