ついやらかしてしまった
「エウリール、お前に会う前に、ソフィアと俺は、エミリアの店に行った」
エミリア、という名を聞いた瞬間、エウリールの顔つきが変わる。
「そこでロルフとベラに会った。そしてエミリアが日本のエクソシストに捕まったと聞いた。そして今エミリアは式神という状態で、日本のエクソシスト――陰陽師に使役されているのだろう?」
エウリールは頷き、エミリアが捕えられた経緯を話し始める。
「おれが調べたところ、エミリアはハロウィンの日、たまたま人間の男に声をかけられた。エミリアは基本、人間とは関わらない。悪魔相手の商売をして、ひっそり地上で生きていたからだ。
だがエミリアに声をかけた人間の男は、しつこかった。しつこかったが、トークが上手い奴だった。だから酒の一杯ぐらいなら付き合ってやろう、そう思った。だがその男はトークも上手いが、酒の勧め方もスマートで、エミリアはついつい飲み過ぎてしまった。
で、酔っぱらって、ついやらかしてしまった。相手の男から、生気を少しばかり吸ってしまった。そこを運悪く、見られてしまった。力の強い理の守り手という、悪魔を調伏できる、この国の機関の職員に。そして調伏されてしまった。その後、そのまま陰陽師に引き渡され、今は式神として使役されている状態だ」
ちょっとした気の緩みが命取りになったのか。
「その陰陽師とは、どんな奴なんだ?」
「なんでもこの国で一番強いエクソシストで、バチカンでもその名は知られているらしい」
「そうなのか⁉」
まさかここでバチカンが出てくるとは思わなかった。思わず驚きの声をあげてしまう。
「ああ。だから喧嘩を売ってエミリアを取り戻す、というのは得策ではない」
極東の、しかもアジアの島国の日本にいるという陰陽師を、バチカンが認めた。これはよっぽどのことだ。力づくでエミリアを取り戻すのは……エウリールが言う通り、得策ではない。
「エミリアが捕まった、となった時、エミリアの店の女悪魔や常連客の悪魔は、力づくでエミリアを奪い返そうとしていた。で、おれもそれに巻き込まれ、その陰陽師がどんな奴か調べることになった。
するとまだ大学生で、見た目は中学生ぐらいの少年、でもその力はとんでもない、ということが分かった。日本には妖という魔物がいるのだが、神話の時代を生きたような魔物から、妖の頂点に立つような魔物まで、ソイツは次から次へと調伏していた。
おれたちが束になってかかっても、返り討ちされることは、火を見るよりも明らかだった。なにせおれは今、大天使の力も行使できないしな」
「……そこまでの強さなら、確かに力づくは無理だろうな。それで、手をこまねくことになったのか?」
エウリールは腕組みをして、その時のことを思い出すように、話を続けた。
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