新婚生活について聞かせてもらおう
15時までまだ15分あったが、内線電話が鳴る。
レセプションの女性からの、来客を告げる電話だ。
すぐさまアクラシエルにも連絡し、エントランスホールに向かう。
「アクラシエル」
久々に見るphantomは……ラファエルは、元々細かったのに、さらに痩せたようだ。だが大きく開いた白いシャツの胸元からは、驚くぐらいの谷間が見えている。体にフィットしたジーンズにくるまれたヒップは、綺麗な曲線を描き、それは胸と同じぐらい、触れたくなる美しさだ。
「ラファエル様!」
アクラシエルは、ラファエルに駆け寄るなり、その体を力強く抱きしめた。
こうしてみると、アクラシエルは……男性に見える。
そしてラファエルは……俺は男性であると認識したはずだったが、女性にしか見えない。……谷間やヒップを見たせいもあるが。
「マティアス、ありがとう。そしてソフィアちゃん、君には本当にヒドイことをしてしまった。すまなかったね……。こんな私を許し、アクラシエルに会わせてくれて、本当に……心から感謝しているよ、二人には」
涙を浮かべ、心からの感謝の言葉を述べるラファエルを見て、ソフィアは穏やかに微笑む。
「天界ではアクラシエルさんに、とてもお世話になりました。どうかアクラシエルさんのためにも、一日も早く修行を終え、天界に戻ってきてくださいね」
ラファエルはソフィアの言葉に深く頷く。
「ラファエル様、これからどうしますか?」
アクラシエルの問いに、ラファエルは笑顔になる。
「我が家に案内するよ。……マティアス、今晩遅くならないうちに……」
「ラファエル、俺はアクラシエルの保護者じゃない。いつ帰って来ようが文句は言わない。とりあえず連絡だけはつくようにしてくれ」
「……分かった。ありがとう」
ラファエルはそう言うとウリエル……エウリールを見た。
「もう行ってもらって構わない。おれはマティアスとソフィアと、濃密な時間を過ごさせてもらうから」
「車は……」
「おいおい、ラファエル。おれは子供じゃないんだ。適当にタクシーでも拾うから」
「分かった」
ラファエルは再度俺たちに頭を下げると、アクラシエルと手をつなぎ、エントランスホールから出て行った。
「さあて、マティアスにソフィア、わざわざこのおれに会いに来るとは……。ソフィアのその手に輝く指輪。ついに二人は結ばれたわけだな。いやあ、本当に長かった。千年に渡って禁欲生活を送った悪魔が他にいるか? いないだろうな。さあ、お前たちの部屋で詳しく聞かせてもらおうか。新婚生活について」
エウリールは両腕を広げ、右腕を俺の肩に、左腕をソフィアの肩に置いた。
「……エウリール、その、婚儀の件だが」
「ああ、こんな場所で話せることじゃないだろう? まずは部屋へ行こう」
エウリールがぐいぐい押すので、仕方なくソフィアも俺も歩き出した。
次回更新タイトルは「おれが女を抱こうとすると……」です。
明日もまた読みに来ていただけると大変嬉しく思います。
それでは明日も学校、お仕事、頑張りましょう‼




