キスはお預け
「マティアス、ソフィア、連絡を待っているよ!」
二人と女悪魔たちに見送られ、店を出た。
「なんだか悪魔の皆さんって陽気ですね。私は戦場に出たことがないですし、悪魔狩りも初めてなので、実際の悪魔に会ったのは始めでしたが、驚きました」
アクラシエルは率直な感想を漏らした。
「ロルフとベラは元悪魔で、今は人間です。でも他の三人は正真正銘の女悪魔でした。でも不思議とそこまで禍々しい気配は感じませんでしたね……」
ソフィアの言う通りだった。何か気配を感じはするが、それは不快なものではない。
「これは俺の推測に過ぎないが、お互いに相手を憎むことなく、純粋な気持ちで接したら、気配の質も変わるのかもしれないな」
そんなことを話しながら、神の家に戻った。
戦果はなく戻ったが、バトラー他、職員から何か言われることはない。むしろそろそろ昼食の時間なので、カフェで食事をとることを勧められた。
「……エミリアの件はあまりにも情報が少なくて動きようがない。ひとまず食事にするか」
ソフィアもアクラシエルも同意し、カフェに向かう。
ランチはコース料理が一種類のみ用意されている。
前菜は温野菜の盛り合わせ、スープはオニオンスープ、メインはハンバーグ……。
「肉を食べていいのか?」
俺の問いにアクラシエルが首をブンブン振った。
「肉や魚はダメです。ハンバーグという料理は食べたことがありませんが、おそらく大豆を使ったものかと。天界でも大豆を肉に見立て、料理にして提供しているレストランがありますから」
アクラシエルの言葉を聞いたソフィアは、瞳を輝かせる。
「そうなんですね! 大豆をお肉代わりにする……。なるほど。マティアス様、今度挑戦してみます!」
ソフィアが嬉しそうに微笑んだ。
実際、ハンバーグが登場し、口にしてみると……。
付け合わせのソースが濃厚だったこともあり、大豆とは思えない味わいだ。自家製パンともよくあう味で、三人ともパンをおかわりしている。
「ご馳走様でした!」
デザートを食べ終え、カフェを出ようとすると……。
「私、大豆ハンバーグのレシピを教えてもらってから戻ります。お二人は先にお部屋に戻ってください」
ソフィアは俺にカードキーを渡したが……。
「俺も興味があるから聞きたい」
特に興味はない。ただ、ソフィアから離れたくなかった。
「マティアス様、料理もお上手ですからね」
俺の意図に気づかないソフィアは、嬉しそうに微笑む。
そんな瞬間のソフィアを見る度に、愛しいという気持ちがこみ上げる。レシピを聞いて部屋に戻る最中から、ソフィアを求める気持ちが高まっていた。
だから……。
部屋に戻るとすぐにソフィアを抱き寄せ、その唇にキスをしていた。
「マティアス様、ちょっと待ってください。日本のエクソシストについて少し調べさせてください」
本当はベッドに押し倒して、存分にキスをしたかった。
だがそれを我慢し、日本のエクソシストについて調べるソフィアに付き合うことにする。
「マティアス様に抱きかかえられていると、動きにくいのですが……」
「キスをお預けされているんだ。これ以上の我慢を強いるなら、強制的にベッドに連れて行く」
「もう、マティアス様ったら……」そんな風に言いながらも、俺に一度優しくキスをすると、スマホの操作を始める。
俺はそんなソフィアを抱きかかえた状態で、その可愛らしい手が操作するスマホの画面を覗き込んだ。
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次回更新タイトルは「抵抗できなくなるまでのキス」です。
明日もまた読みに来ていただけると大変嬉しく思います。
それでは明日も学校、お仕事、頑張りましょう‼




