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Ghost and Girl  作者: M.K
エクストラコンテンツ
80/81

ステージ5:舞台裏

「帰ったね」


 洋服も、マンガも、フィギュアも、ポスターも、ゲームも――すべてが元通り果てしない空虚な闇のなかへ没しながらも、エリはついさっき目の前で眠りについた彼女の顔を今もなおそこにあるかのように克明に思い描きつぶやいた。


「ええ、無事にお家に送り届けました」


 煙のようにふっと現れたオバケがその呟きに答えたが、会話は続かなかった。これまで盛り上げてくれていた主役がいなくなったのと、エリの心情を考えれば当たり前ではあるけれど、それにしてもここの静けさは異質だとオバケは改めて思った。


「それでどうです? これで心残りはなくなりましたか?」


 その問いにエリは驚いたようにパッと振り向いた。が、彼女の唇は動かず、視線もすぐに下へ落ちてしまった。オバケは彼女の表情から、彼女がいま自身の心を探っているのだとわかった。しばらくしてエリは口を開いた。


「逆にできちゃった」

「え?」

「あたりまえじゃん。もっと生きたいよ。リラともっともっと色んなことをしたい。ゲームだってマンガだって、お菓子だけじゃなくて一緒にごはんも食べたいし、遊園地とか水族館とか……それにもっと生きてたらきっとできてたわたしの好きなものをリラに知ってもらいたかった」


 少女の悲痛なむきだしの心にオバケは口をつぐむ。


「……でもまあ、いいかな。いろいろやりたいことができちゃったけど、リラの背中を押せたから、リラの夢につながったからまんぞく」


 そう言ってエリは笑った。その朗らかな笑みを見てオバケはほっとした。神様の計らいゆえにこういう結果になるとわかっていたとはいえ、幼い子どもの正直な気持ちをぶつけられたときはさすがに不安になった。自分の気持ちを吐き出せてどことなくスッキリした顔つきになったエリは、おもむろに裾を引っ張って例のパスワードを見下ろしながら言った。


「……それにしても、これなんだろ?」

「パソコンのパスワードって言ってたんでパソコンでなにかするんでしょうけど……」オバケも上から覗き込み首をかしげて言った。


 ふたりはそのまましばらく考えてみたもののそれらしい答えは浮かばなかったため、諦めたエリは服から手を離した。


「なんにせよリラが頑張れるならいいや。楽しみにとっておこ……でも、できるなら早めがいいんだけどね」

「どうしてですか?」

「……わかってるくせに。あんまり遅くてあなたたちみたいになっちゃったら大変だからね」

「そうなったらリラさんがこっちにくるまで気長に待ちましょう」

「それもいいけど、あっちとこっちとじゃ時間が違うからね。まあ、一番の問題は神様かな。もういちどお願いを聞いてくれるかな?」

「そうですね……おふたりがいい子にしていたら聞いてくれるんじゃないんですか?」

「サンタさんじゃないんだし……」


 そこでオバケと少女はふいに見つめ合って、そして笑い出した。

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