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Ghost and Girl  作者: M.K
ステージ5
69/81

エピソード11:とっておきの部屋

「え゛っ!」


 とっておきを見て最初にリラが踏みつぶされたカエルのような声をあげた。エリは隣の女の子のとんでもない声を聞き苦笑いをしながら気の毒そうな視線を送り、その後ろでオバケは心底楽し気に笑っていた。ふたりの振り返った先にあったのは、スタジオのセットのような二方の壁が取り去られた部屋だった。その部屋は子ども部屋のようで、丸まった黄色い毛布が乗った小さなベッド、服がぐちゃぐちゃにしまわれ袖がしっぽみたいに飛び出ているクローゼット、食べかけのお菓子や飲みかけのペットボトルが置かれ、その周りをほったらかしにして伸び放題になったツルのように配線がうにゃうにゃと絡まるデスク。もっと詳しく語れば、床にも洋服が散らばっていて、壁には白色がほとんど見えなくなるほどアニメやらゲームやらのポスターが貼ってあり、何かが置けるスペースには色んなキャラのフィギュアが立ち並び様々な方向を向いてポーズを取っている。


「ちょっと待ってよ! これはちょっとナシでしょ!?」


 リラは大きな声を出して、ダッシュで自室に入っていくと、床に放り出されたままの服を拾い始めた。そこへオバケが近づいてきて言った。


「ここを片付けても意味がないですよ。本当の部屋ではなくて再現した部屋ですから」オバケはニヤニヤしている。

「そんなの関係ないって!」


 そうして拾い集めた服を両手で抱えて、クローゼットに押し込み扉を閉めたところへ、


「おじゃまします」とエリが遊びに来た。

「おじゃまするのはあと五分ぐらい待って! 片付けるから」リラは通せんぼをしながらエリに懇願した。

「わたしは気にしないけど」そう言いながらエリは部屋のあちこちを見渡す。

「あたしが気にするの!」

「というよりわたしはこのままのほうがいい」

「え?」

「だって普段はこんな感じなんでしょ?」

「……ま、まぁ」

「ならこのままのほうがリラのお家に遊びにきたって感じがするから」


 エリに―それもものすごく嬉しそうな笑顔で―そう言われてしまったからにはもうリラに断るという選択肢はとれなかった。それでしぶしぶといった感じで脇にどき


「……どうぞ」とお客さんを招き入れた。

「おじゃまします」


 エリはもういちど言って、床に散乱しているものを踏まないように気をつけながら部屋の真ん中へと進み、ある意味で本人のお墨付きをもらった部屋をぐるっと見渡した。毛布の転がるベッド、ポスターだらけの壁、漫画がつまった本棚、フィギュアでいっぱいの戸棚、モニターやゴミや配線で飾られた机を口をなかば開けて眺める。それから今度はそれぞれに近寄って移動しながらより細かいところを見ていく。本棚でリラが普段どんな漫画を読んでいるのか、聞いたことのあるものから知らないものまで端からひとつひとつタイトルを見ていって、近くのポスターやフィギュアに視線を移し「これはあの漫画ので……」とか「これはないからゲームのかな……」とか答え合わせをし、たまに床へ視線を落とすと脱ぎっぱなしなのかしまっていないだけなのかどちらかわからない服に「こういうのも着るんだ」と感想をこぼし、そして机ももちろん上も下もあますとこなく見尽くす。そのそばでは部屋の主がもじもじとしていた。散らかっている自室を見られるでさえ恥ずかしいのに、エリの見方がまるで偉人の住んでいた当時のまま保存された部屋を観覧するかのようで余計に照れてしまう。実際、エリはどこにでもあるマンガやフィギュアをさも貴重な展示品であるかのように見はしても決して触ろうとしない。


「エリ……そんなまじまじと見ないでよ」


 と小さな声で言われ振り返って、彼女には珍しく小さくなって俯いている姿を目にし、自分が何をしているのか気がついた。


「ご、ごめん……」

「いや、ね。見るのは全然いいんだけど……そんなにマジメに見られちゃうとね」

「そうだよね」


 恥ずかしさで、申し訳なさで、ふたりは口をつぐんで気まずさが部屋にもうもうと立ちこめる。しかしその空気を察してリラは照れを取っ払って言った。


「それに気になるものがあるなら遠慮なんかしないで読んだり触ったりしてよ!」

「でも……」

「いいの! いいの!」

「……じゃ」


 そう言ってエリは近くにあったフィギュアを持って、優しい手つきで回して見た。それは黒いローブを身にまとい先に藍色の宝石をつけた大きな杖を持った女の子のフィギュアだった。


「これは何のキャラ?」

「ああ、それはゲームのキャラで――――」


 とリラが解説をしようとしたところでオバケが割って入ってきた。

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