エピソード7:ホッケー決着。次の対戦は……
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決勝点が入った。最終スコアは10-5で勝利はリラの手に。向こう側の足場からエリが飛んで戻ってくる。
「やっぱりリラは強いね」
「エリだって強かったよ。なんかいきなりうまくなって、勝てたのも一点差のギリギリだったんだもん」
白熱した試合だった。最初は経験値の違いからリラが三点連続でゴールを決めたのだが、その時エリの身になにが起きたのか急にハンドル操作が巧みになり、リラが驚いているうちに立て続けに三点もぎとって、四点目からはほぼほぼ実力が拮抗したためなかなか点が入らず、もはや誰にもどっちが勝つのか予想できなくなっていた。最終的にはいま言った通りリラに勝利の女神は微笑んだ、しかし観客は勝者だけにではなくすばらしい勝負を見せてくれたふたりにあふれんばかりの拍手を送り、賞賛を受ける彼女たちも勝ち負けよりも二人で遊べたことのほうが大切だった。
「いや~それにしても楽しかったね!」
「うん、もう一回やってもいいぐらい」
「うんうん! でも今は次のをやろっか」
「そうだね」
リラの顔は笑顔で輝き、エリの顔はほころんでいる。楽しそうに話している姿は無邪気そのもので、もしふたりのお母さんとお父さんが見ていたならつられて微笑んでいただろう。そこへオバケがやってきて案内を始めた。
「巨大ホッケーはどうでした? おふたりの様子を見るかぎり満足してもらえたと思いますが」
「ピンポンブラザーズは歯ごたえがなかったけど、珍しいものを見れたし、なによりエリと対決できたからめっちゃよかったよ」
「わたしもリラとできてよかった」
「それならブラザーズも安心したんじゃないんでしょうか。ところで、これで最初の競技が終わったわけですが、このまま次に移ってもよろしいですか? それとも休憩をはさみますか?」
「う~ん、あたしはこのまま次に行っちゃってもいいけど、エリは?」
「わたしもいいよ」
「では、まずステージの用意をしましょう。危ないのでおふたりはそこから動かないでください。いいですか? いっさいですよ」
となにやら警告を発してオバケはステージでもなく観客席でもない何もない暗闇に向けて合図を送った。するとホッケーフィールドが足場を残し音もなく闇のなかへ沈み、残った足場のうち向こう側のがこちらの左隣に移動してきてぐるっと一回転し、それからふたつの足場が変形しひとつになって酒場のカウンターのようになると、最後に両側の観客席が観客を乗せたままふたりの背後にまわってきた。
「なるほどね。なにやるかわかった」リラは得意げに鼻を鳴らした。
「では聞きますが、答えは?」
「射的でしょ?」
「お見事! その通りです!」
「やったね」とリラはVサイン。
それにエリが拍手を送ると、どこからともなく数体のオバケが何かを持って現れ、カウンターの半分から右にそれを並べた。ハンドガン、アサルトライフル、サブマシンガン、ショットガン、スナイパーライフルにロケットランチャーなど陳列されたのは、色んな種類の銃だった。ゲームのなかぐらいでしか見たことのない種類の銃を目の前にしてリラは興奮し、ガラスケースの宝石を眺めるかのように、一つ一つまじまじと見ていった。
「眺めるだけじゃなく手に取ってみてください。もちろん本物じゃないので安全です。エリさんもどうぞ」
そういうことらしいのでリラはおそるおそるハンドガンを拾い上げ、リラが持ったのを見てエリも隣のアサルトライフルを持ち上げた。リラは興味津々といったふうに色々回して見てみたり遠くの方へ向けて構えてみたりしているのに対し、エリはリラほどには関心があるわけではないが初めて触る銃を物珍しげに眺めている。
「試しに撃ってみますか?」
「え? まあ、撃ってもいいなら……」
遠慮がちにリラが答えるとオバケが指示を出し、カウンターの向こう側の何もない空間にいくつかの丸い的が出現した。それらは止まっているものもあれば上下や左右に動いているもの、不規則に移動しているものもある。リラはカウンターの前で銃を構える。左目をつぶってアイアンサイト越しに一番近くの静止している的に狙いを定め、二、三回呼吸をしたあと緊張し胸打つ鼓動を聞きながら引き金を引いた。銃声が響き、パリンと的が割れた。
「おお! 当たった! 当たった!」
「すごい」
喜びはしゃぐリラにエリはまた拍手する。そこにオバケも加わる。
「おめでとうございます! さすがですね。ところで銃声はどうでした? 大きくありませんでしたか?」
「あーどうだろう? ちょっと大きいかもね。エリはどうだった? 横で聞いてて」
「すこしうるさかったかも」
「じゃ小さくして」
「わかりました。……はい、すこし小さくしました。リラさん、お願いします」
「了解!」
そう言ってリラは数発撃った。もうコツをつかんだのか、どれも的に当ててみせた。
「エリ、どう?」
「もうちょっとだけ」
そうしてまた音量を下げ、試射し、エリのオッケーが出たため調整が終わり、オバケは次の説明に入った。
「いま目の前には多くの銃がありますが性能に違いはありません。六発の弾が込められていて撃ちきったら数秒の待ち時間がありふたたび撃てるようになります。違いがあるとすれば音ぐらいです」
そういわれてリラが試しにショットガンを使ってみると確かに先ほどとは異なる銃声が響いた。
「そして実はまだ特別な武器が一つあります」
「特別?」
そうリラが言うと黒色の空から四体のオバケがその特別な武器をぶらさげて降りてきて、カウンターの横におろした。それはぽっかりと大きな口が開いた丸筒――大砲だった。




