エピソード9:おわりへ
「え? もう?」
時の過ぎるはやさにリラは驚いたが、内心助かったとも思った。
「はい。そして次が最終ステージです。それが終わればお家に帰れます」
しかし安心したのもつかのま、予期せぬ知らせにリラは言葉を失った。何度も何度もパネルの言葉に目を走らせてようやくそれを飲みこむと、おもむろに顔をエリのほうへ向けた。だが、肝心なときに彼女の長い髪が隠していた。リラの心は言いようもない焦りを感じた。
「……ね、ねえ、まだお菓子ぜんぶ食べてないし、ジュースも残ってるからもうちょっとだけいいでしょ?」その焦燥をリラはそのまま口にした。
しかし、オバケは首を振った。「申し訳ありませんがそれはできません」
それでもリラは引きのばそうとしたが、オバケはもう一度首を振った。無意識にリラは視線をエリに送る。エリはうつむいていた。それでリラは悟った。太陽はほとんどその姿を隠し夜が空を染め、気まずい空気がさらに悲しみに暮れ重苦しく部屋に満ちる。オバケがためらいがちにパネルの文字を変えた。「では、次のステージに移動してもらえますか?」
すると入口の反対側の壁の一部が静かな音をたてて開いた。リラの顔が音のした方へ動き、パネルに移り、オバケを向き、最後にまたエリを見て伏せた。しかし、すぐに顔を上げた。そこには強がりが浮かんでいた。
「それじゃしかたないね。次に行こっか」
そこで初めてエリはリラを見た。二人の瞳が重なる。たがいに同じ色をその奥に見た。
「……うん」エリはうなずいた。
そうして二人は椅子から降りて、オバケの案内のもと出口へと向かった。そこでリラはいったん立ち止まり言った。
「次で終わっちゃうかもしれないけど、せっかくだから最後まで楽しも」
「……そうだね」
それにエリがうなずいて、ふたりは微笑んだ。そこにちょっとだけさみしさはあったけれども、楽しもうと思う気持ちに嘘偽りはなかった。そしてリラがエリの手を取って、彼女たちは最終ステージへと進んだ。




