エピソード6:おいしいもの
「飲みものかぁ……」
そう言いながらあれこれと――炭酸や果汁100パーセントのジュース、緑茶やほうじ茶、レモンティーやミルクティーを(コーヒーは飲めないから考えもしなかった)頭のなかに並べて、ふとあることを思い出しすこし悩んだあと
「……エリはどうするの?」向かい側に座る幽霊の女の子そう聞いた。
すると意外な答えが返ってきた。
「言わなかったけど、幽霊でもいちおう食べたり飲んだりできる」
「そうなの!?」リラは心底びっくりして、おもわず体を起こした。
「正確に言うと、食べたことがあったり飲んだことがあったりするものの味を思い出せるだけなんだけど」
「じゃさっきのステージの時に気にしないでって言ってたのって……」
「そういうこと」
「それならそうと言ってよ~。あたしだけ楽しんじゃ悪いなって気にしてたんだから」
「ふふ、ごめんね」
「まあ、エリも楽しめるならいいんだけどさ」そう言ったあとリラは袋からお菓子を取り出し机の上に並べて、続けた。「それじゃ飲みものはお菓子を開けてからにしない? このお菓子ならこれってのがあるからね」
「いいね」それに賛成してエリもお菓子を机に出した。
リラの前には六個、エリの前には五個のお菓子がある。それを見てリラはニヤッと笑った。
「一個差であたしの勝ちだね」
「負けた」とエリは嬉しそうに言った。
「と言いたいところだけど、本当はあたしも五個なんだよね」
「どういうこと?」
「最後あとほんとに一歩ってとこで終わっちゃってさ、ゲットできなかったんだけど、オバケが内緒でってくれたんだ」
「言っちゃっていいの? それ」
「……あ!」
エリに言われて気づきリラは当のオバケを見た。やれやれといったふうに首を振っていた。
「ごめん! つい!」
謝るリラにオバケはパネルに触れて答えた。「言ってしまったものはしょうがないので大丈夫です」
二人の様子を見ていたエリとそのオバケはくすくすと笑いあっていた。
そんなこんなで飲みものはお菓子を見てからということに決まり、そしてそのお菓子は一個一個交互に開けていくことになった。まず開封するのはひとつ多いリラだが、適当なものを手に取ったのでさっそく開けていくのかと思ったら、くるくると回し箱の大きさを確かめると今度は耳元へ持っていき振り出した。いくつもの塊の転がる音がする。そしてもういちど箱の形を確認するとリラは言った。
「たぶんだけどなにかわかった」
「ほんと?」
「うん。でも、ふたつのうちどっちかはわかんないんだよね」
「ふたつあるの?」
「そう、まあとりあえず開けてみよっか」
そう言ってリラがプレゼントボックス模様のラッピングを剥がしていくと、中からとんがり帽子にクッキーが刺さったチョコレート菓子が顔を出した。
「なるほど」それを見てエリは納得した。
「エリはどっち派? あたしはタケノコ」
「わたしはキノコ」
「じゃ、ここにきてエリと戦わなきゃならないのか」
「負けないよ」
「あたしだって、そう簡単に屈したりしないから」そういってリラは拳を固く握りしめるが、すぐにパッと力を抜いた。「まあでも、今日だけはキノコ派になってもいいかな」
それを聞いてエリも微笑んで言った。
「わたしも今日だけはいい。あったらだけど……」
次はエリの番だが、彼女が最初に取ったものはラッピングではなくプレゼントボックス模様の紙箱だった。それをリラを真似て耳元で振ってみた。カサカサと軽い音がする。
「なにかわかった?」リラが聞いた。
「たぶんだけど……スナックだと思う」
「ポテトチップスとか?」
「たぶん」
そう自信なさげに答えたあとエリは紙箱の口を探して開け、中を覗き込んでそれを引っ張り出した。黄色いパッケージの袋が音をたて、それからジャガイモの体をしたキャラクターが顔を見せた。
「当たってたじゃん!」
「うん」エリは嬉しそうにうなずいた。
「何味?」
「のりしお」
「マジ!? やった! いちばん好きなんだよね」
「わたしも。二番目は?」
「うすしお」
「コンソメ」
「さすがにそこまではそろわなかったかぁ。箱のなかはそれだけ?」
「うん」
そんな他愛もない話をしながら二人はラッピングやらボックスやらを開けていった。空飛ぶ円盤の上には、今開けたチョコとポテトチップスのほか、クッキーやおせんべい、ポップコーン、バウムクーヘン、どら焼きなんかもある。ずらりと並んだ戦利品にリラは目を輝かせる。エリもさっきから顔があっちこっちと動き回っている。
「エリは最初どれから食べる?」
「どれもいいから迷う」
「ね!」リラは楽し気に同意をし、くちびるをとがらせ唸ったあと「……もうきめらんないから最初のやつでいいかな」そう言ってキノコを手に取った。
「わたしもそれでいいかな」エリもポテトチップスを取った。
「じゃ飲み物決めよっか」




