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Ghost and Girl  作者: M.K
ステージ4
54/81

エピソード5:休憩は快適なイスと、それから

「おお!」リラは感嘆の声を上げる。


 エリも声は出さなかったものの口が小さくあいている。

 扉の向こう側に広がっていたお楽しみはこれまでとかなり趣の変わった小部屋だった。これまでがみすぼらしいボロ小屋や古風で華やかな書斎や寝室、洋館とちょっとした奇妙さはあったものの現実の内装をもとにしていたのに対して、扉を境に一気に時間が飛び去って空想や願望の未来がひらけた。部屋全体は明るい青緑を基調とし、椅子や机、ベッドなど基本的な家具がおかれているのだが、そのどれもが足を忘れてしまっている。それに加えて、入って右側に視線を向けると窓があるのだが、その向こう側にはお馴染みの光景が――――高層ビルと車のその間を縫うように飛び交う様が広がっていた。ただ行きかう人々は白い丸っこい塊だった。

 リラとエリは物珍しそうにあたりを見渡す。そのあとに続いてオバケたちも入ってきて、いつものように看板を……


「なにそれ? 看板じゃないじゃん」オバケの手にしているものを見てリラは驚いたように言った。


 白いぬいぐるみのような手が持っていたのは目を疑うほど透明なパネルで、丸くなっている角のおかげでかろうじてそこにあるとわかるが、見る角度によっては書かれている文字が宙に浮いているように見える。「なんせ未来ですから、看板なんて古いもんは使いません」オバケが文字を払う。「そんなことよりどうぞ椅子に座ってください」

 オバケにすすめられ二人は椅子に近づく。未来の椅子はたまごをくりぬいたような形で中身が黄身だけのものと白身だけのものがあり、それぞれどういった原理なのか、地面から数十センチほど浮いている。リラはほとんど無意識にクッションが黄色の椅子を選び、そばに立つと右足を椅子の下に通した。するりと通り抜ける。次にしゃがんで下を覗いた。明るい青緑のカラはツルツルと丸く光沢をはなっていた。


「どうなってんの?」リラは振り返ってオバケに聞いた。


 オバケがポンとパネルをタッチする。「それは企業秘密です」もう一回タッチする。「椅子の位置や高さはほとんど力要らずで自由自在に調節できますので、いろいろ試してみてください」

 そう言われリラはさっそく椅子の頭をつかみ移動させてみた。何の抵抗もなく滑るように動いた。


「おお!」


 あまりの軽さに感動しつつ、今度は持ち上げてみた。するといともたやすく高くなった。


「スゴ!」


 さらに驚く彼女の前にグルっとオバケが回ってきてパネルを見せる。「ちなみに地面に置いても倒れません」

 さっそくリラは試してみた。自分の腰より上に鎮座するたまごを引き寄せ、そのまま地面に置き、そっと手を離す。物音は立たなかった。まるで地面に接着でもされているかのように直立している。オバケがパネルをはらった。「座ってみてください」

 その催促に驚き疑わしさ半分期待半分の視線を送って、リラはおそるおそる殻のなかに身を沈めた。しかし、座ったのはいいものの鉄筋でも入れたかのように背筋を張っていて、あきらかに強張っているのがはたから見てもわかる。そんな彼女の前にふたたびオバケが回ってきてパネルを見せた。「大丈夫ですよ。そのまま体をあずけ足を離してみてください」

 リラは信じられないといったふうな表情を見せたが、やがて意を決したらしく体を倒しはじめ、それから足を持ち上げた。椅子は微動だにしなかった。


「おお!」


 感動し声をあげるリラへオバケが話しかける。「椅子の角度を変えたい場合は地面に足をつけて、その方向へ力をいれてください」続けて「それから、ひじのところにあるボタンやスティックでも調節できます」

 言われた通りにリラが足をおろし後ろに体重をかけると後ろに傾き、左に力を入れると左に、右にやれば右に、どの方向へも倒すことができかつ角度の微調整もさらには位置や高さの変更もボタンやスティックで行えた。リラは右へ左へ、上へ下へ、回ったり横になったりして遊びつくしたあと、今度は難しい顔でボタンやスティックを操作しはじめ、まもなく満足のいく位置に定まったらしく顔をほころばせた。


「ねえ、エリ。スゴイね、未来のイスは」宙に浮かぶ円盤を挟んだ向かい側のエリにリラは語りかけた。


「うん」するとすこし気の抜けた声が返ってきた。


 リラがいろいろといじくりまわしていた間に、エリは一足先に快適なポジションを見つけくつろいでいた。そうしてふたりが心地よさに包まれていると、オバケがそれぞれに声をかけた。「なにか飲みものでもどうですか? お水でもジュースでもお茶でも紅茶でもコーヒーでも、なんでも用意できます」

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