エピソード4:集め終わって、きゅうけい
リラは残り時間を確かめたかったが、確認できるようなものは支給されていないため、残念ながら残された猶予はわからない。しかし、制限時間は五分ということから考えると終わりはもうまもなくなはず。
「ほんとうに、ぜったい捕まんないから!」リラはそう誓いをたてると「よし!」と最後に気合を入れ、オバケが来ていないか辺りを見渡し、そして駆け出した。
その後のリラは誓ったとおりにオバケに遭遇しても逃げおおせ続けた……わけでもなく、華麗に魔の手から逃れたと思いきや次の瞬間には今のは何だったんだと思うぐらいにあっさり捕まって泣き言を吐き、そんなふうに逃げつつ、捕まりつつ、手にしつつゲームを進めていった。そして数メートル先にぶらさがったお菓子を見つけ、リラは「たぶんあれが最後!」と思い残っている体力を全部振り絞り、目の前に迫ったお菓子めがけて手を伸ばしたその瞬間、白い塊が床からお菓子とリラの手のあいだに飛び込んできた。それに気がついたリラだが勢いを殺せずそのまま思いっきり掴んだ。なんともいえない柔らかさだった。
「……もしかして時間切れ?」
手をもみもみとさせその例えようのないふんわり感? もっちり感? を堪能しながらリラはオバケに聞いた。
すると揉んでいることをいっさい咎めることなくオバケは例のごとく口から看板を取り出して見せた。「そのとおり! なので残念ながらこのお菓子はゲットならずです」
「え~」とリラはがっくりとうなだれるが、すぐに顔を上げて言った。「ま、しょうがないね、時間切れじゃ。それで次はどうするん?」
そう聞かれてオバケは看板を裏返した。「お部屋に案内しますのでついてきてください」
「りょうかい」リラの返事は沈みがちだった。しかたないとはいえついその気持ちが出てしまう。
その落ち込んだ声を聞いてオバケは移動しかけたところで止まり、キョロキョロとあたりを見渡した。リラが「ん?」と不思議に思いながら眺めていると、オバケはやがてお菓子のほうへ振り向き、手に取って、彼女に差し出した。
「え?」
リラが驚いてそう声を出して、お菓子、オバケと視線を移すと、オバケはもう片方の手をギザギザした口の前に持っていった。
「いいの?」
彼女の問いにオバケはうんうんとうなずく。とたんにリラの顔が明るくなって笑顔が咲いた。
「ありがと!」
そうしてちょっとおまけをもらい、迷路の端っこ――地図でいうと真南――に案内されると、エリが先に来ていてリラのことを待っていた。右手で口を閉じるように袋を持っていた。それを見てリラは「エリ!」と名前を呼び、頭の上で袋を振りながら駆け寄った。
「おまたせ! 先に来てたんだね」
「ほんのちょっと、ね」
「エリもお菓子ゲットできたんだ」
「うん、中身はわかんないけど」
二人がそんな会話を交わしているとなりで、リラの案内をつとめたオバケがなにやら壁を探っている。右手を上から下へと動かして、そうしたら右にちょっとズレて、たまに壁をひっかいて、不思議な動きをしていた。それに気がついたリラとエリは話を途中でやめ、視線を移した。
「なにやってんのかな?」リラが言った。
「なにか探してるみたいだけど」エリが答えた。
「あれに似てるね。ラップとかのはしっこを見つけるときにするやつ。爪でひっかくでしょ?」
「たしかに」
そんなやりとりを尻目にオバケは作業を黙々と続ける。そして目的のものが引っかかったらしいのだがなかなかうまくいかず、何度も何度もガリガリと壁をかいたすえにようやくペロっとしっぽを見せた。そうとう焦っていたのか準備を無事終えられ一安心したような仕草をしたあと、オバケは二人のほうを向き看板を掲げた。「おまたせしました。ではお部屋に案内します」
それからうやうやしく礼をするとやっとのことで見つけたしっぽをつかみ、二人の前を横切って剥がしていく。そして壁紙がすべて剥がされ、そこに現れたのは一枚の扉だった。
「それだけ? 隠してるからなんかスゴイもんが出てくるって期待してたんだけど、ねぇ?」とリラはエリのほうを向いて言った。
「ね。もうちょっと、こうなんかあったと思う」エリもリラに合わせてオバケをちゃかした。
すると隠しをめくったオバケが看板を見せた。「これはゲームの邪魔にならないように隠しただけですので。お楽しみはここからですよ」
「だってさ、どんなのが出てくるんだろうね」リラはいじわるな笑みを浮かべてエリに言った。
「うん、楽しみだね」エリも口角をちょっと上げて言った。
妙なプレッシャーをふたりからかけられて動揺するオバケだが、そこは一応自信があるようですぐに気を取り直すと、片方は扉の前へ、もう片方はふたりの隣に並び進むよう促した。二人が歩いて扉の前に立つと、待っていたオバケがノブをつかみ扉を開いた。




