エピソード2:おやつあつめ
ふたりの言葉にオバケはがっくりと肩を落とすが、すぐに気を取り直して口のなかに手を突っ込むと、二枚の紙とふたつの袋を取り出してふたりに差し出した。その光景ももはや当たり前となってしまい何の反応も示すことなくそれらを受け取り、さっそくリラは紙のほうを見てみた。紙には前ステージと同じように地図が書かれていた。ただ前回のが屋敷といった一般的な建物だったのに対し、今回のはステージ1に近い迷路のようになっていて、おそらくいま自分たちがいる部屋を中心に直線やカクカクと折れ曲がった通路が周りを取り囲んでいる。全体としては縦長の長方形。その迷路の形にリラは何か引っかかりを感じた。なんとなく見覚えがある。しかし「なんだ?」と心の中で唱えて、頭の中をほじくりかえしてみても、引っかかりは取れなかった。それでしかたないととりあえず保留にしておいて、つぎに袋のほうを調べてみた。なんてことのないただの白い袋だった。それでもあえて何かを言うのなら、リラはサンタクロースがかついでいるあの袋と持っている袋を重ねた。リラが紙と袋を調べ終わったところで、オバケが今度は看板を引っ張り出してきて、彼女たちに見せた。それには「ステージ4は……」と中途半端に書かれていた。
「ステージ4は?」
リラがそう言うと、オバケはくるっと看板をひっくり返した。「そろそろ小腹が空いてきたころでしょうからおやつタイムです」とあった。
「え!? マジ!? やった!」と喜んだのもつかのま、ハッと気がついてリラはエリのほうを見た。「でも……エリはどうなの? 食べられるの?」
心配するリラにエリはいつも通りの口調で答えた。
「大丈夫、気にしないで」
「でも……いいの?」
「うん」
そのしっかりとした返事にリラはそれ以上なにも言わなかった。
ふたりのやりとりが済んだのを見てオバケはまた看板を裏返した。「ですが、もちろんタダではあげません」さらにひるがえす。「迷路の中にあるお菓子を、制限時間内に、わたしたちに捕まらないようにして集めなければいけません」
その説明を見てリラの胸の引っかかりが消えた。
「なるほど、そっか、パックマンだ。これ」
「ん?」
「や、この地図を見てさ、なんかすごい見覚えがあって。なんだっけなって考えても思い出せなくて。で、今の説明でわかったんだよね。エリは知ってる? パックマン」
「うん。あれでしょ、丸くて黄色いのがパクパクしてるやつ」
「そうそう!」
話が盛り上がり始めたところでオバケがまた看板をくるっと回したのでふたりは口を閉じた。「制限時間は五分。わたしたちに捕まると十秒動けなくなってしまうので気をつけてください。なにか質問はありますか?」
「質問か……エリはなんかある?」
「ん~特には……」
「あたしもないから、大丈夫かな」
オバケが看板を回転させる。「では、準備ができたら声をかけてください」
説明を終えたオバケは看板を食べるとクッションへ飛び込み、それから腕をにゅっと伸ばすと枕にし目を閉じた。そのリラックスした姿を横目にふたりは話し始めた。
「なにか準備することある?」エリが聞いた。
「んーまあ、あるとすればどうするか? だよね。紙と袋がふたつずつあるけど一緒に行くか、別れていくか」そう答えたあと続けて「それと、どっちにしてもどのルートにするか、持ち時間は五分しかないからね」と三つの扉を順番に見ながら言った。
「やっぱり別々のほうがいいよね」
「うん、あたしもそう思う。そのほうがいっぱい取れるしね」
「じゃリラはどこから行く?」
「ん~そうだね……」
相談の結果、リラは左――地図では右――からエリは右――地図での左――から始めて、時計回りに集めていくことになった。そうすれば互いに取りこぼしたお菓子を拾えるかもしれないため。しかし、もちろんこれは基本的な方針でオバケの出方次第では逆方向に行かざるを得ないこともあり、そのへんは適当にというふうに最終的にまとまった。準備が完了したのでリラはだらけているオバケに声をかけた。オバケは目を開け起き上がり、ふたたびふたりの前に浮かぶと看板とランタンを取り出した。「では位置についてください」と書いてある。
「じゃさっきの感じで」
「うん」
リラとエリはそれぞれの扉へと向かった。ふたりが扉の前に着いたのを確認すると、オバケはランタンを高らかに掲げ思いっきり振った。始まりの合図が響き渡る。




