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Ghost and Girl  作者: M.K
ステージ3
49/81

エピソード21:ステージクリア?

 足音を忍ばせ、呼吸を静かに、彼女たちは――エリは初めての――二階へ足を運んだ。ついでに例のへんてこなお風呂に寄って、リラでは手の届かないシャワーをエリが手に取ったり、子供用のプールみたいに浅い浴槽にいっしょに入ったりしておかしがった。満足して窓の調査に移ってから数分後、エリがリラを呼んだ。


「あった?」

「見て」


 そう言われてエリの指差した縁の部分に視線を向けると何かをはめ込める窪みが二箇所あった。


「え? じゃ置いていかないといけないの?」それが何なのか理解しリラはガッカリして言った。

「じゃないと本当に盗みになっちゃうから」

「そうだよね。しかたない」


 名残惜しそうにリラはブレスレットの紐をほどき、ピンと伸ばして花の一つ一つを窪みにはめていった。それが終わり今度はエリがピアスを穴に入れると、目を疑うような現象が起こった。それまで窓に映っていた荒れ模様を、あのみすぼらしい廊下が液体が広がっていくように塗りつぶしたのだ。リラは隣の窓に視線を移した。外は相変わらずの大荒れだった。


「どうなってるん?」


 リラは隣の窓に身を乗り出して覗いてみたが、本来ならあるはずのものはなかった。体を戻して、エリに言った。


「いやーここで色んなものを見てきたけど、これまたスゴイね」

「うん」


 そうエリがうなずいたのと同時に不吉な金属音がガランガランと響き渡った。ビックリしてふたりが振り返ると、この窓へと続く廊下の向こうがわで、オバケがふたりを指差しながらランタンを振り回していた。


「ヤバ! はやく!」


 いくつもの白い丸頭がここかしこから出てくる。


「ちょっと待って」そう言ってエリは浮かび上がって窓を開け振り返り、そして手を差し伸べた。「つかまって」

「ありがと!」


 お礼を言ってリラが手をつかまえるとエリはぐいっと引っ張り上げ、その力を利用してリラは縁に足をかけ勢いよく秘密の通路へと跳んだ。


「行こう! 行こう!」

「うん」


 リラは地面を、エリは空を猛ダッシュで駆けていく。少し先にある角を左に曲がると、向こうに次の扉が見えた。


「あった! あった! あそこまで、全力で!」


 エリにそう言ってからリラが気になってちらっと後ろを振り返ると、とてつもない度肝を抜くような光景が広がっていた。無数の白い体と黒い目と口がひしめきあってめちゃくちゃになりながら、それでもまだ飽きたらないのかあちこちからさらにオバケが飛び出てきて混じりあって、もう個々の区別ができなくなって一体のバケモノと化した塊が怒濤の勢いで二人に迫っていた。


「ワァー!!」たまらずリラは叫んで、全力を超えて速度を上げた。


 それを見てエリも気になって振り返った。あまりにひどい光景にあぶなく止まりかけて、同じくしかし無言で限界を突破した。


 そしてとんでもないバケモノがすぐそこに差し迫るなか、次の扉まであと数メートルのところへ来て、突如目の前の地面がパックリと割れた。危ない!! とリラは急ブレーキをかけたが無念、勢いは殺しきれずいきなり現れた穴へとそのまま投げ出された。ゆっくりと過行く時の中で、リラは死を覚悟した。その脳裏に走馬灯が――家族のこと、友達のこと、学校のこと、遊んだゲームのこと、色んな思い出が一瞬にして過ぎ去っていき、そして最後にエリとのかけがえのない時間が駆け巡っていった。やがてリラは深い深い闇に吸い込まれていった。……かと思いきや二体のオバケがその先で待ちかまえていて、落ちようとするリラをとらえた。ふたたび二人の人間につかまった宇宙人のような恰好になってしまったが、次々に降りかかる事態に頭が追いつかず、わめきたてることもなくなされるがままだった。となりを疾走していたエリも予想外のできごとに戸惑い、ただなりゆきを見守ることしかできないでいる。リラをぶらさげたオバケたちはなにをするのか、またふりだしに戻すのか、その挙動に静かな注目が集まるなか、にわかにリラを吸い込もうとしていた暗闇に照明がともった。見ると、照明に照らされて地下へと長く続く円筒の大きな口が姿を現した。


「え?」思ってもみなかったものを目にし、ついリラは声をもらした。


 そうして驚くリラをオバケたちは落とし穴の端っこに座らせ、ひとりが後ろにひとりが前に来ると、前に回ったオバケがトランシーバーと同じように看板を口から取り出し彼女に見せた。そこには「準備はいい?」と書かれていた。その間に後ろのオバケはひっそりとトランシーバーと地図を回収した。


「え? ……あ、うん」それにリラはついうなずいてしまった。「あ! やっぱ、ちょ――――」


 そこでやっとリラの頭は状況に追いつき止めようとしたがむなしく、後ろにいるオバケはリラの背中をグッと押した。


「ワァー!! ーーーーァ……」…………


 猛烈な勢いでリラは滑り落ちていき、彼女の叫び声はだんだんと小さくなっていた。

 そしてリラを見送ったオバケたちは今度はエリの番と言わんばかりにいっせいに振り返った。


「わかってる」


 無数の目に一度に見つめられ驚きつつもそう返し、いそいそと準備をして、エリもリラを追って滑っていった。

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