エピソード19:ヒント
「なにか音したよね?」リラが尋ねると
「うん」エリは頷いた。
もちろんちょっとした怖さがあったけれど、どうしても気になるのでふたりは物音の原因を見に行くことにした。リラは地図をたたんでしまい、先頭に立って音がした方へ歩いていくと、そこにあったのは例の紙と羽ペンだった。それから推測するにどうやら羽ペンが倒れたようだが、一体全体どうして倒れたのか、ひとりでに立ち上がったとでもいうのか。しかし、それが正解のようだ。というのも底のない深淵のように黒い羽毛は今、対照的に真白な紙面の上にかぶさっていて、あきらかにエリが置いた場所と違うからだ。ここに来てオバケが実在することを知ったリラもさすがに物がひとりでに動いたとなると驚きを隠せず、もしやと思ってエリに羽ペンをどかしてもらうと、そこには予想した通りの信じられない光景があった。
「まさかと思ったけど……本当に返事がきてるね」その光景を目にしてリラはそう言った。
隠しの下にあったのは、エリの書いた丸っこい錫色の『こんにちは』ではなく、真黒で流れるように書かれた『こんにちは』だった。
「どうする?」隣で同じようにのぞきこんでいるエリがリラに尋ねた。
「う~ん……とりあえず誰だか聞いてみる?」
「そうだね」とリラの提案に賛成して書きだそうとしたところでエリの手が止まった。「……なんて書く?」
「どちらさまですか? でいいんじゃない」
言われた通りにエリが文字をつづりペンを置くと、まもなく錫色が水に溶けるようになくなり、それから羽が紙の上を舞い墨のように黒い返信が現れた。
「え!?」踊っている羽を感心しながら眺めていたリラは、それが書きだした内容におもわず声を上げた。「冥冥だって!」
「……ほんとうかな?」対してエリは冷静に言った。
「本人じゃない? だって嘘をつくのにこんな名前出す?」
「たしかに。それじゃ返事はどうする?」
「まあ、まずはこっちも自己紹介しとこ。そちらは? って聞かれてるし」
「そうだね」
それでエリがふたりの名前を書き自己紹介をすると、やがて返信が来た。その内容に目を通した二人は、さらにビックリし目を見開いた。「リラとエリだね、よろしく。単刀直入に聞くけど、もしかして秘密の通路を探してる?」――――紙面にこう浮かび上がったのだ。
「なんでわかったんだろ?」リラは顔をエリの方へ向け聞いた。
「聞いてみる?」それにエリはそう答えた。
「おねがい」
返信が来て、さっそくそれを読んだふたりはなるほどと納得した。「錫色の文通セットがあるのは私の屋敷だけで、そこに女の子ふたりがいるとなると、おばけたちがイタズラでもしたのかと思ったんだ。たまーにしでかすからね」これが冥冥からの返答だった。その推測がおおむね合っていることそして出るための秘密の通路のありかを尋ねると、答えとしてこう返ってきた。
「ブレスレットとピアスは見つけられたかな? それならそのふたつを探してみて」




