エピソード13:報告会
「だいじょうぶ?」
するとリラは弱り切った調子で返事をした。
「だいじょうぶだけどさぁ、あんなさらし首みたいなことしなくてもいいじゃんねぇ。まあでも、あたしのせいでここに戻されちゃったのは事実だし……ごめんね」
「いいよ、ぜんぜん。それよりリラはなにか見つけた?」
「ん? ああ」力のない返事をしながらリラは地図を広げた。「すぐに見つかちゃったからぜんぜん探索できてないんだけど、階段からすぐ右にあるお風呂を探してべつの部屋に行こうとしたら見つかちゃって……」
「そうなんだ。お風呂ってどんなんだった?」
「それがさ、やっぱりオバケが使ってるからかかなり変わってた。まずお風呂がすっごい浅くてさ、あたしのひざぐらいまでしかなくて、逆にシャワーとかシャンプーとかボディーソープとかはめちゃくちゃ高いとこにあって、あたしじゃ背伸びしても届かなかったもん」
「ほんと? それ」
「ほんとだって! あとでエリも見にきなよ。まあ、そもそもオバケがお風呂に入るってのが変な話だけど。なにを洗うっていうんだか」
リラは肩をすくめて言った。
「それでエリの方はどうだった? なにかあった?」
「ちょっと地図を借りていい?」
「いいよ、はい」
地図を受け取り自分の行った場所を見せながらエリは話し始めた。
「わたしは別れたあとそのまま反対側の保管庫に行って」
「保管庫?」
「うん。いろいろ不思議なものがあって、オバケが見えるようになるメガネとか、つけて寝ると死んだ人と会えるお線香とか、幽霊が近づくと鳴りだすオルゴールとか」
「え? じゃあエリが近づくと鳴るの?」
「そう。ほんとに近くに行ったら回りだして、離れたら止まった」
「マジ!? いいなぁ。どんなんか見てみたい」
「ほかにもいろいろあったからあとで一緒にいこ?」
「いいね!」
お買い物かテーマパークにでも来たかのような和気藹々とした報告会をし、二人はふたたびかくれんぼに挑むため扉へと向かった。
「さっきと同じでいい?」リラはエリに尋ねた。
「うん」
「今度は絶対に! 見つからないから安心して」
「わたしも気をつける」
「じゃクリアめざして!」
そう言ってリラは手のひらを地面に向けて差し出した。それを見てエリも手を出して、その上に重ねた。
「えいえい、オー!」
「おー」
そして二人は元気な声を高らかにあげた。
ふたたび館のなかに入ったリラとエリをこの世ならざるものを誘う暗闇と荒れ狂う自然の喧騒が包み込み、そのさなかで二人は真剣な面持ちを浮かべる。
「もうこっからお別れでもいい?」
「うん、だいじょうぶ」
「じゃなにかあったら」
「りょうかい」
エリの返事を聞きリラは階段へと足を進めた。道中またやらかすことのないように目と耳に神経を集中させ、まもなく階段の入口が見え、そこを音を立てないようにかつ素早くのぼっていく。そして無事二階に着いた彼女は地図を開きあたりを見回した。今のところやつらがいる兆しはない。このまま前回の続きを探しに行くか、それとも別の場所を見に行くか。地図とにらめっこをして、結局お風呂の先を調べに行くことにした。地図を折りたたみ、右の道をお風呂を通り過ぎ、次の部屋へ向かう。次の部屋は地図によると私室らしい。お風呂のことがあってどんなへんてこな作りなんだろうかと想像しながら、周りへの注意も怠らず急いだ。やがて私室への扉が視界に映ったので駆け寄り、耳をそばだてた。中から金属音は聞こえてこない。おそらく大丈夫だろうと判断したリラは、ノブを掴みゆっくりと静かに扉を開け、自分が通れる隙間ができると素早く通り抜け、そして慎重に閉じた。
振り返ると、彼女は失望した。面白い光景が目に飛び込んでくるんじゃないかと期待してなるべく視界に入れないようにしていたのだが、そこにあったのはいたって普通の寝室だった。ベッドがあって、ナイトテーブルがあって、化粧台があって、クローゼットがあって、どこを見てもつまらない部屋だった。その平凡極まりなさにガッカリしつつ、リラはしょうがないと調査を開始した。ベッドの下、化粧台の下、クローゼットの中、何かが隠されていそうな場所をすみずみまで探したが、それらしきものは見つけられなかった。しかし、なんとなくそんな気がしていたのでそれほど落ち込むこともなく、地図を見て次の目的地を決めると、さっさと私室をあとにした。




