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Ghost and Girl  作者: M.K
ステージ3
40/81

エピソード12:つかまる

 そうしてふたりはいろいろ準備を済ませ扉のところまで行くと、外の様子を細心の注意をはらいながら探り、連中がいないことがわかると扉を開け階段のところまで抜き足差し足で歩いた。階段のふもとに着くと、声をおさえて話し始めた。


「じゃ、あたしは二階に行くから。エリは引き続き一階の探索よろしく!」

「うん」

「なにかあったらすぐに連絡してね。ちょっとしたことでも遠慮なくね!」

「わかった」

「それじゃ最後にお互いの無事を祈って」


 そう言ってリラは右手を差し出した。それに応えてエリは彼女の手を握った。そうして健闘を祈り終わると、リラは手を振りながら階段を忍び足で慎重に上がっていった。その姿を見えなくなるまで見送ってエリは踵を返し、ゆらりとさらなる調査へ向かった。ところが、エリが階段を離れてすぐのところでリラから連絡が入った。


「こちらリラ。いま話しても大丈夫でしょうか? どうぞ」


 こんな早くに連絡が来るなんて思ってもみなかったのでエリは驚きつつも、話し方や声の調子から緊急事態でないことがわかったのでそこは安心し、あたりの状況を確かめてから返答した。


「こちらエリ。大丈夫です。どうぞ」

「大丈夫そうだね」するとリラはそう言った。それに首をかしげていると彼女の声が続けて聞こえてきた。「ちょっとね、ちゃんと二階からもつながるのか確かめたかっただけなんだ。それだけだから、ごめんね」


 そういうことかとエリは納得した。


「ううん」

「それじゃ、またね!」


 プツリとリラとの通信が切れた。とたんにひとりになり、静寂が霊のごとくそこにやってきた。エリはあたりを見回した。自然と澄んだ耳に、雷嵐の騒乱がくぐもって聞こえる。彼女はふとこことすこし似た寂しい場所で目が覚めたことを思い出した。罪悪感にちくりと胸を刺され、彼女はうつむき、考え込みだした。


 顔を伏せ物思いに沈みだしてからしばらくして、エリはなにかを思い出したかのようにハッとした。そして頭を振って、ギュッとトランシーバーを握ると、駆け出していった。彼女がまず向かったのは保管庫だった。それは階段からまっすぐに進んだ先の突き当りにあり、内装は保管庫より展示室といったほうが適しているようだった。というのもおそらく館の主が研究のために収集したであろう様々な品が、明るい照明のもと、ガラスケースのなかに解説付きで飾られていたからだ。現世でオバケが見えるようになるメガネ、幽霊が近くにいると奏ではじめるオルゴール(実際、エリがそばにいると物悲しげな心を締め付ける旋律が、通常よりもゆっくりに流れだす)、これを焚いて眠りにつくと死者に会えるというお香などなど。幽霊になってからも見たことも聞いたこともない興味深い品々に、あとでリラにも見せようと思いつつ、もしかしたらここにもうひとつのアイテムがあるかもと調べまわったが、どのガラスケースも密閉されていてまたブレスレットが入っていたような宝箱もなかったので、どうやらここはハズレのようだった。肩を落とし、次に彼女はすぐ隣にある御手洗に向かった。オバケに用がある場所なのか、そして男女にわける必要があるのかという疑問はさておき、エリは赤青のオバケを交互に見たあとひとまず赤色のほうへ入った。ところが彼女が入ってからまもなく、とつぜん彼女の目の前に一体のオバケが姿を現した。そして彼女を見て、口を両手で覆いながらクスクスと笑い出した。見つかったはずはないのにと訝しんでいると手元のトランシーバーがノイズを発し、情けない声が聞こえてきた。


「ごめ~ん、見つかちゃった」


 エリの顔からおもわず笑みがこぼれる。


「急にオバケが現れたからなにかと思った」トランシーバーを口元に持っていきボタンを押しながらそう言うと、

「ごめ~ん」となさけなく謝る声がふたたび聞こえてきた。


 すると突如出現したオバケの他にあらたに数体のオバケが、トイレの床や天井や個室から出てきた。そしてニヤニヤと笑いながらエリを取り囲み、腕をつかんで、背中を押して、彼女を連行しはじめた。トイレの、廊下の、部屋の壁を抜け、一直線にスタート地点へと連れていき、そこで彼女を解放した。当然のことながらやらかした張本人は、二階を探索していてかつ人間のためまだ来ておらず、エリはひとり彼女の到着を待った。しばらくしてなにやら扉の向こうが騒がしくなったと思ったら扉が開き、UFOキャッチャーの景品またはロズウェル事件の宇宙人よろしく吊られてリラはやってきた。そこでエリとリラの視線が交わる、がすぐにリラは目をそらしてしまう。そんな彼女の気持ちなんておかまいなしに、まわりをまっすぐにあるいは上下に波打ちながらぐるぐると回ったり、目の前に来てニヤつきながら指をさしたりと、おもしろくってたまらないと見せつけるように無音のどんちゃん騒ぎを繰り広げてオバケたちはリラを吊り下げたままエリのところまで運んだ。ところが不可解なことに彼らは彼女を降ろそうとしなかった。エリはなぜ降ろさないのか理解できなかったが、当のぶら下げられているリラの方はすぐにその意図を察し、もがきながら嘆願した。


「こんな仕打ちあんまりだよ! はやく降ろして~」


 その哀願でエリはオバケの意地悪だとわかり珍しく怒ったような口調で言った。


「はやく降ろしてあげて」


 たちまちどんちゃん騒ぎは静まり、おとなしくリラを解放したオバケたちは蜘蛛の子を散らすようにそそくさと退散していった。そして底意地の悪い屈辱が終わり地面に降り立ったリラにエリは声をかけた。

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