エピソード11:つながる
「別行動?」
「そう! 一階と二階にわかれてそれぞれ探しに行くの。トランシーバーがあるからなにかあった時はすぐに連絡できるし、どう?」
エリはすこし考えて答えた。
「いいよ。でも、どっちがどっちに行く?」
「う~ん、エリはどっちがいい?」
「特には。リラが好きに決めていいよ」
「じゃ、あたしは二階を探しに行くから、エリはこのまま一階を見て回って。それでいい?」
リラは別行動をしようと決めた時に抱いた希望を伝えた。彼女が二階を選んだのは、エリに二階を一から調査してもらうのは悪いと思ったのと――どちらかといえばこちらのほうが割合占めているかもしれない――ただ単純に自分が行きたかったから。それでリラの希望を聞いたエリは迷うそぶりすら見せずに答えた。
「いいけど、それならすこしだけ時間もらってもいい?」
「ぜんぜんかまわないけど、なにするん?」
「地図を覚えようかなって」
そう言いながらエリは持っている地図をひろげた。
「いいよいいよ。地図はエリが持ってて。あたしはなくったってなれっこだから平気だし」
「ううん、二階は最初から探さないといけないから大変だろうし、リラが使って」
そうやってお互いに譲り合うもののどうやら状況的に主導権はエリにあるようで、彼女は持ったままだとおぼえにくいからと地図を机の上におき、廊下や部屋を人差し指でなぞりはじめ、その指先に一心に視線を注いだ。その姿にリラはこれ以上言ってもしかたがないことを悟り、彼女の作業の邪魔にならないように口をつぐんだ。それからしばらくして、黙々と一階を頭のなかに叩き込んでいたエリが「よし」とつぶやき、頭をあげた。
「おまたせ。いちおう覚えられたと思う」
そしてそう言いながら地図を折りたたみ、リラに渡した。
「まあ、もし忘れちゃったときはあたしに連絡してよ。トランシーバーがあるからすぐに教えられるし」
「そうする」
「それじゃ行こ――」言いかけて言葉を切ったあと、すこし間をあけてからリラは言った。「っかの前にトランシーバーがちゃんと使えるか確認しておかないと。エリは使い方わかる?」
「あんまり」
「じゃ、ちょうどいいね。確認しながら教えるよ」
「おねがい」
ふたりはトランシーバーを取り出し、隣り合った。
「まず電源の入れ方なんだけど、この上についてるグリグリあるでしょ? これが電源と音量をかねてて、ちょっと回すと電源がついて、さらに回すと音が大きくできる」
リラは説明をしながら実演してみせた。エリもまねてやってみた。まずトランシーバーの上のつまみをちょっと力を込めて回すと、つまみのガラスだか透明なプラスチックだかの部分が緑色に光り、画面に幽霊通信と出た。さらにつまみを回すと、パネルに数字と右側へと段々と高くなっていくゲージが表示された。
「で、次に画面の下にある矢印が書かれているボタンでチャンネルを合わせるの」
「チャンネルって?」
「う~ん、あたしも詳しいことはわかんないだよね。わかるのはとりあえず話したい人と合わせればいいってことぐらい」
それでふたりはボタンを押してチャンネルが変わることを確かめたあと、かりとしてチャンネル1に合わせておいた。
「これであとは横っちょのボタンを押せば話せるはず。ちょっと待ってて」
そう言ってリラは部屋の反対側に向かった。そして彼女がトランシーバーを口元に持っていくのが見えると、エリのトランシーバーからノイズ混じりの声が聞こえてきた。
「あーあーこちらリラ。聞こえますでしょうか。どうぞ」
そしてプツリと切れた。エリはなんだか妙にドキドキしながらボタンを押して返事をした。
「こちらエリ。聞こえます。どうぞ」
するとすぐにリラから返答がきた。
「ごめんエリ、話すときはボタン押しっぱじゃないと。離しちゃうと切れちゃうんだよね」
それじゃ聞こえてないのにひとりで話していたのかとエリは恥ずかしく思いながら、あらためてボタンを押したまま言った。
「これでだいじょうぶ?」
「OK! OK!」
これでトランシーバーがちゃんと動作することが確認できたので、リラはエリのところへ戻った。
「じゃ準備も完了したことだし、そろそろ行こっか」
「うん」




