エピソード10:意図
「まあ、でもそうか、エリはわかんないのか。それじゃエリはそういうことって気にしないの? ここはこういうふうなことを狙ってるんだろなとかこれはこんな感じに見せたいんだろうなとかって」
リラにそう聞かれてエリは「んー」と顔を斜め上に向けて生きていたころのことを振り返った。
「あんまり気にしなかったかな。それだけでもおもしろかったし。リラはなんで気にするようになったの?」
「あたしも最初はエリとおなじだったんだけど、ある時じぶんの好きな作品の製作者インタビューをたまたまネットで見つけて、気になって読んでみたんだよね。そしたら、キャラクターや演出に自分の思ってたのと違う意味があったり、同じでももっと色々な要素が絡み合ってたりとか、まったく気にならなかったちょっとしたことにもちゃんと意図を含ませてあったりとか、あとちょっと違うけど、裏事情的なことで変わっちゃったことがあったり、とにかくもうこれがおもしろくって! そのあとも他の作品のインタビューを調べて読んでるうちに、自然とそういうことを意識するようになったんだよね」
「へぇ~スゴイね。わたしは読んで『あーおもしろかった』でパタンってそれっきりだもん」エリは感心した様子で言った。
「そんなことないよ。楽しみかたはひとそれぞれだし、それぞれによさがあるからね」
「そうかもしれないけど、わたしはスゴイと思う」
「そう? それならスゴイってことで!」
「うん」
そうして話が落ち着いたところで、リラは思い出したかのように言った。
「ごめんね、変なことにつきあわせちゃって。そろそろ次の所に行きたいけどもうすこしこの本を見たいから、もうちょっとだけ待っててもらえる?」
「いいよ、わたしもリラの話が聞きたいから。じゃ、読み終わったら呼んで」
「わかった。ありがと」
エリはうなずいてさっきまで読んでいた本のところまで戻っていった。それを見送ってからリラは続きにとりかかった。
――およそ三十分ほどが経った。リラは自伝を閉じて机の上に置き、読書に没頭しているエリに近寄って声をかけた。
「エリ、おまたせ」
するとエリは体をピクっとさせ、振り返った。
「ちょっと待ってて」
そしてそう言ったあと顔を本に戻し、急いで続きに目を通して、それをしまった。
「読みたいのがあるなら読んでてもいいよ。待ってるから」急かせてしまったことを悪く思いリラがそう言うと
「ううん、ほんとにあとちょっとだけだったから」エリは首を振った。
「ほんとにいいの?」たいしてリラが念を押すと
「うん。それよりリラの方はどうだったの? なにかあった?」エリはうなずいたあと、そう尋ねた。
リラはエリが気をつかっているのかと思ったが特にそういった様子はなく、かりにそうだったとしても本人が言っている手前何度も聞くのはそれはそれで悪い気がするので、質問に答えることにした。
「うん、かなり重要なことがあった。なんでもこの洋館には隠し通路があって、その入口を見つけるためにはどうやらふたつのアイテムが必要らしいってはしっこのほうに殴り書きされてた。で、たぶんその秘密の通路がゴールで、さっきゲットしたこのブレスレットがふたつのアイテムのうちのひとつなんだと思う」
「それじゃもうひとつのほうが二階にあるんかな?」エリは地図を出しながら言った。
「かもしれないし、通路の方があるのかも。それでなんだけど、こっから別行動にしない?」リラはエリの疑問に答えつつ、殴り書きを読んだときに思いついたことをさっそく提案した。




