エピソード4:花かざり
リラは隠れるのをやめて言った。
「こんな感じでやっていくわけ」
「わかった。でも、これからどうするの?」
「とりあえずオバケがいた部屋を調べよっか」
意識してなのか無意識になのか足音をなるべくたてないようにしてリラは扉へとそろそろと歩いていった。扉に着き彼女は念のため同じように音を鳴らさないようにゆっくりと力を入れ始めた。隙間が開き、そこから中の様子をうかがう。おぼろげな光がまず目に優しく触れた。中では四つのロウソクが等間隔で小さな火を灯していて、その明かりに長い食卓とそれを囲む椅子の陰が見える。どうやら食堂のようだがお皿は出されていなかった。しかし、
「箱があるね」エリがぼそっと言った。
エリの言うように箱はあった。大きさが、縦横がノートが入るぐらいで、高さが本体十センチ半円状のふたが五センチほど、そして鉄枠と草花の彫刻が施された木製の箱だった。
「開けてみる?」箱を目の前にしてエリが尋ねた。
「もちろん。当たり前じゃん!」リラは小声で、でも元気よく答え、ふたに手をかけゆっくりと開けた。
「お?」
そしてそう声を上げて中に入っていたものを取り出した。中身はブレスレットだった。茎かつるを模しているのか緑色のひもに、大きさの若干のバラつきがある花が白、黄、青など様々な色を咲かせている。
「かわいい! ね、エリもみてみて!」
「いいね」
「でしょ! オバケが用意したんかな? だとしたらなかなかいい趣味してる」
「うん。でも、どうするの? それ」
「う~ん…………ちょっとわかんない」
リラの予想では懐中電灯か鍵が入っているはずだった。しかし、その予想はものの見事にハズレ、しかも他にもいくつか思いついた物があったのだがそのどれにもかすってすらおらず、まさかの中身に両手では数え切れないほどの謎を解いてきた彼女をもってしても、現状では使い道が思いつかなかった。
「ま、先に進めばわかるでしょ。それよりどうする? エリつける?」
使い道についてはとりあえず隅っこに追いやって、リラはエリに聞いた。
「いいよ、リラがつけて」
「ほんと? いいの?」
「うん」
「ならつけちゃうね」
そう嬉しそうにニコニコと笑って言うとリラはブレスレットを左手首につけた。そして前に後ろに回してどの位置が一番花を美しく飾れるのかということにほんの少しの時間を費やし、やがて
「OK!」と満足げに言って「ねえ、どう? いいかんじだと思うんだけど」
「いいと思うけど、声が聞こえちゃうかもよ」ブレスレットをほめつつ、エリはそう注意した。
エリに注意されてリラはハッと思い出し、慌てて周りを見回し耳を澄ませた。揺れるカンテラの音は聞こえてこない。ホッと胸を撫でおろす。
「ごめん」
「ううん、気にしないで」
「ありがと、ごめんね」
「うん」
嬉しさのあまり声が戻っていることに気がつかず、エリに言われなければオバケに見つかってしまっていたかと思うと、リラはある意味でこういったことに詳しい先輩として自分を責めずにはいられなかった。すると
「それじゃ、次はどうする?」エリが聞いてきた。
「次? ……ん~と」
リラはすこし落ち込んでいたが、気持ちを切り替えて考え始めた。ミスをしたとはいえ取り返しがつかないわけではないので次ちゃんと気をつければいいことだし、なにより今みたいに―たぶんだけど―沈んでいてエリに気をつかわせてしまうほうがいやだった。
「次はね、さっきのが戻ってこないか警戒しつつ左に行ってみようと思う。いい?」それで小さな声でそう提案すると、
「ok」合わせてエリも小声で賛成した。




