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Ghost and Girl  作者: M.K
ステージ3
30/81

エピソード2:包囲

 突然ふたりは音に脅かされた。ガシャガシャ、ザワザワ、ザーザーと、風が雨が、窓を叩き打ち枝葉を揺らしぶつかる音に包囲された。リラは騒音にちょっと驚きつつも静かに扉を閉めると、その出所を探した。それはすぐに見つかった。どうやらふたりは洋館かなにかの廊下にいるようで、入ってきた扉のすぐ右に左への曲がり角があり、そこに窓がひとつ、青白い透明な月明かりに暗い廊下へ十字の影を落としていた。そしてけたたましく鳴いている。リラは近づいていき覗き込んだ。風に揺れ雨に歪んだ奥で、鬱蒼と生い茂る木々の空間を切り取ったような濃い影が震え、静かに三日月が弧を描いていた。とその瞬間、空が真っ白に染まった。そして雷鳴がとどろいた。


「わっ!」リラはびっくりしておもわず窓から離れた。

「だいじょうぶ?」それまで静かに様子を見守っていたエリが心配そうに声をかけた。

「だいじょうぶ、だいじょうぶ。ちょっとびっくりしただけだから――――」


 苦笑いをしてエリを振り返った途端、リラは驚いたふうに目を見張った。


「どうしたの?」


 そしてエリの声で我に返り、言った。


「あ、いや、かなり雰囲気があるなって」

「雰囲気?」

「そう。エリと月がさ」


 彼女はいま斜めに注がれる月光のなかに佇んでいた。その光に彼女の青白い肌とカーテンのような白い服が溶け合い、みだれ髪と彼女と服のシワの影がくっきりと浮かび上がる……かと思えば、今度は溶け合った白さが浮かんでくる。対照が描き出す絵に魅了され、リラは物語のなかに迷い込んでしまったかのような錯覚に陥った。


「そう?」エリが聞くと、

「うん、だいぶいいよ」とリラは片目をつぶり、両方の親指と人差し指で作った小窓を通して、彼女を眺めはじめた。


 ふたりがのんきに遊んでいる廊下の奥でその時、カチャと扉の開く音がした。風、雨が騒がしくてもふたりの耳はその金属音をたしかにひろった。たちまちリラの顔から笑顔が消える。そして彼女は音のしたほうを振り返った。それと同時に、彼女たちから数メートル先の等間隔の月明かりから外れた暗闇にオレンジ色の切れ込みが入った。するとキーっと甲高く響き、眩い火を宿したカンテラとそれを持つ丸っこくて白い手が現れたかと思うと、ギザギザした口と空虚な目が姿を見せた。そしてリラとオバケは目を合わせた。


 わずかな膠着があった。おもむろにオバケがカンテラをかかげ、振り始めた。ガランガランと鐘を打つような音が建物全体に響き渡り、リラが音に驚いたのとほぼ同時に、壁から床から天井からあらゆるところからオバケの白い体が生えてきた。その光景に驚きをさらに重ねていると、生えてきたオバケたちがあっという間にふたりを取り囲んだ。


「な、なに!?」


 さっきまで真っ暗だった廊下が気がつけば真っ白に染まり、その中で無数の黒い口と目がふたりの周りを不気味にゆっくりと回っている。リラの体は完全に固まってしまい、声を出すことしかできなかった。すると、二体のオバケが群れの中から出てきて彼女に近づき手を掴むと、いつかのエリのように彼女を持ち上げはじめた。そしてそのままどこかへ連れ出した。一方でエリの方はというと、さすがに同じオバケ相手ではすり抜けも使えないのか、あとについていくよう背中をぐいぐい押されていた。


 とんでもない事態に抵抗する余裕もなく、首元を咥えられて運ばれる子ネコのようにおとなしくしていると、トランシーバーを渡された小部屋に戻ってきてそこで解放された。そして好き勝手やったオバケたちも弾けるように解散していった。

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