エピソード1:っぽいオバケ
そんなこんなでわらいあった二人は、すこし休憩したのち、最後の箱を押して出てきた廊下を次に向けて歩き始めた。そして歩きだしてすぐにリラが口を開いた。
「それにしてもさ、エリのあれはズルいよね」
「あれ?」エリは首を傾げた。
「壁抜け、だよ。壁抜け」
「ああ」エリは合点がいったようで何度か頭を上下した。
「普通だったら一個一個押してって確かめなきゃなんないんだよ。それをさ、通せんぼを抜けて正解を見れちゃうんだもん。製作者泣かせだね」腕を組みながらリラは言う。「あ、あとそれに――――」
続けて何か言おうと瞬間、リラは突然振り返った。彼女の急な行動にびっくりしつつ、エリも気になって振り返った。が、さっきふざけあった曲がり角が向こうのほうに見えるだけで特に変わったところはなかった。
「どうしたの?」それでエリは廊下をジッと見つめるリラに尋ねた。リラはそのまま答えた。
「んーなんか視線を感じたんだよね」
「視線?」
「そう、背中になんか見られてるなって感じがあったんだけど……気のせいだったんかな?」
「そうかもね。誰もいないみたいだし」周りを見渡し人の気配がないことを確認してからエリは言った。
「ごめん、ごめん。勘違いみたいだし、先いこっか」苦笑いをしてリラは言った。
「うん」
それにエリがうなずき、ふたりは体をもとに戻した。すると、二人の進むべき先にただならぬモノが佇んでいた。
リラは驚き体を硬直させ、まん丸の目で見つめた。
それは細くなっているほうを下にした勾玉に真っ白な布を被せたような体で、ミトンのような丸い手を二本ぶきみに垂らし、目と口なのか二つの黒い穴とジグザグとした切れ目があった。しかし、その目らしき穴に光は宿っていない。どこまでもどこまでも深く落ちていきそうな闇だった。
リラは自分の見ているモノが信じられず呆然と立ち尽くす。エリは無表情で自分とおなじ(と言っていいのだろうか?)モノを見ている。オバケもその真っ暗の空虚な瞳で見つめかえす。さらに三十秒ほど。いっこうに誰ひとりとして動く気配はない。妙な緊張感のある空気がみすぼらしい廊下を支配している。
ところが、突然オバケが丸っこい体をくるっと九十度左回転させて、ひゅーと移動しだした。そしてエリとおなじように壁のなかへ消えていった。




