エピソード9:!!!
「そろそろだと思うんだけど……」
エリが道を確認しに行ってからしばらく、リラはアゴの先にたれる汗を拭きながら心のなかでそうつぶやいた。ひとりでも動かせるとはいえ、いままでの分もあって、もう腕はパンパンで意識しないと視線もひとりでに落ちてしまう。それでも帰ってくる前に押し切ってエリを驚かせてやろうと顔をあげた瞬間、そのエリの顔が視界いっぱいに飛び込んできた。
「わぁーー!!」
「!!」
リラはこの通路いっぱいに響き渡るぐらいの叫び声をあげて尻餅をついた。いっぽうエリは叫びはしなかったものの目をまん丸にして飛びのいた。それで彼女の顔はふたたび箱のなかへ引っ込んでしまった。まるで音という音がどこかに身を潜めてしまったかのように静まり返った。やがてそろそろとエリは箱のなかからまた顔だけをのぞかせ、しりもちをついたままのリラに声をかけた。
「だいじょうぶ?」
「う、うん。大丈夫、大丈夫」
それに対してリラはまだ驚きが抜けきっていないといった感じでそう答えながら立ち上がり、お尻をパタパタと叩いた。そして顔だけ出しているエリに言った。
「いやーなんていうか、心臓がとまるかと思ったよ。まさか目の前に顔が飛び出してくるなんて……」
そこで彼女は「ふぅ」と一息ついた。今ので三回目か四回目か、同じような流れでびっくりさせられて驚き疲れているようだった。
「ごめん……そ、その、はやく見てこなきゃと思ってて」おもわずエリはいつもより早口にちょっと震えた声で言った。。
「いいよいいよ、気にしないで。さっきも言ったけど、やっぱこういうハプニングが起きてこそだし、むしろ今ので気分が軽くなったよ」
そう言いながらリラは両手を組んでそのまま頭の上までもっていき、思いっきり伸びをした。そしてパッと手を離したのと同時に爽やかな笑顔を咲かせた。と思ったら、急に眉を寄せ、両手を腰に当てすこし前のめりになった。
「で、道はわかった? いまのでぜんぶ忘れたってのはナシだからね」
「うん、だいじょうぶ。ちゃんと覚えてるから」隠れている箱のなかで両手をギュッと握りながらエリはしっかりとうなずいた。
「じゃ、ちゃちゃっとこのステージをクリアしてつぎに行こ!」そしてまたリラは満面の笑みを浮かべて言った。
「うん」
エリはコロコロと変わるリラの表情に驚きつつもホッと胸をなでおろした。しかし壁から出たあと、リラが隣に来るのを待ってからもういちど言った。
「ごめんね」
「ううん、いいよ」




