エピソード6:かべ?
そうやって二人は各自めのまえに立ちはだかる壁を調べ始めた。触ってみたり、叩いてみたり、顔をつっこんでみたりと色々試していくなか、リラが端っこであることに気がつき声を張りあげた。
「ねえ! エリ! ちょっとこっちにきて!」
「どうしたの?」
「ちょっとこれ見て」
呼ばれたエリがリラのところへ降りてくると、彼女は右側の壁にほっぺたを押しつけててまねきをしながら言った。怪訝に思いながらもエリは言われたとおり同じかっこうをした。すると彼女がなにを見せたかったのかわかった。
「ね? スキマがあるでしょ?」
「うん」
二人の視界には、正面と右側の壁の間にあるわずかな空間そしてその先にある通路が映っていた。
「でも……」
「そうなんだよね。なんかスイッチとかがあるんかな?」
しかし当然ながら人が通れるわけもないのでエリがそう言うとリラは口をとんがらせながら答えた。そこで二人は壁から離れて近くになにかないかと探してみた、がめぼしいものは見つからなかった。そのため今度は範囲を、リラは左側の壁のほうまで、エリは天井のほうまで広げて調査した。その結果、二人ともおなじものを見つけてきた。そう、上にも左にもすきまがあいていた。
「となると、これは壁じゃなくて箱みたいになってるってこと?」二人の調査結果をもとにリラは腕を組み首をかたむけながら言った。
「そうだね」エリは同意した。
「うーん」それを受けてリラはうなってすこし考えて、チラッとエリを見たあと遠慮がちに言った。「エリがよかったらなんだけど、むこうがわ見てきてもらえる?」
「いいよ。ちょっと待ってて」
リラの心配とはうらはらに、何の躊躇もなくむしろ頼ってもらえるのがよほどうれしいみたいで、エリはちょっとだけ調子の高まった声で引き受け箱の中へと入っていった。少ししてエリが箱の中から出てきたので、さっそくリラは彼女にたずねた。
「どうだった?」
「えーと……むこうにもスイッチみたいなのはなくて、それにちょっと進むと左に道があったんだけどそっちも行き止まりだった」
「そうなんだ」報告の内容にリラは肩を落とした。が、
「でも」とエリは続けた。「なんか変なところがあって、このまっすぐの道が左に行ける道よりまだ先にちょっとだけつづいてて、それでこの箱がちょうど入りそうなスペースができてた」
「ほんと!?」
「うん」
「それじゃ……」
何かを理解したらしくリラはそう言って壁をペタペタと触ったあと、腕捲りをし「よーし!」と気合を入れて両手を箱に当てた。そして全力で壁を押し始めた。すると、信じられないことになんと自分の何倍も、いや何十倍もの大きさを誇る巨壁を、十二歳の少女が押し出し始めた。その様子をただじっと見守っていたエリは壁が動き出したのを見て「おお」と小さな声をもらした。それに合わせてリラはいったん押すのをやめてエリを振り返って言った。
「やっぱり思った通りだったね」
「すごい。めちゃくちゃマッチョ」
「まーね、見かけに騙されちゃダメってことよ。そんなことよりエリも手伝って、そのほうがはやいから」
エリは元気よくうなずき、リラの隣に並んで両手を壁にくっつけた。
「じゃ、行くよ!」
その掛け声に合わせて二人は両腕にありったけの力を込めた。すると、リラがひとりで押したときよりも音をたててずっと動いた。
「このまま行っちゃうよ!」
動き出した勢いを殺さないようにリラがエリに声をかけ、二人はそのまま歯を食いしばって力の限り押し続け、まもなくあと最後のひと押しというところまできた。そこで二人はひと息入れて
「じゃこれが最後!」
リラの合図とともにすっぽりと箱を納めた。そうして二人は力を合わせて目の前の壁を乗り越えた……のではなくその四本の腕の力でもって押して道を作り出した。




