エピソード5:バカでかい
ギーっと音を響かせながら扉は開いていく。そしてある程度隙間ができたところでリラはそこに頭を突っ込んで外を覗き、上下左右と何もないことを念入りに確認したあと、通路へと出た。
「おおー」
扉の下から、開いたすきまから、そしてこれで三度廊下を目にしたけれど実際にその場に立つとリラは驚かずにはいられなかった。廊下はリラが評した通りに物語に出てくるお城みたいにバカでかかった。幅も高さもゆうに十メートルは超えていて、アホみたいに口をぽかんと開けて突っ立っているリラが小人にみえるほど。ただこれも彼女の評した通り、城みたいに大きいとはいえ部屋とおなじくみすぼらしかった。
床は全体的に木が色あせていてところどころに何をこぼしたのか変なシミがあって、壁はもともとこの色だったのかそれとも真っ白だったのがこうなってしまったのかくすんでいて、そこにヒビが震えた細く黒い線を刻んでいる。天井のほうは高くてよくわからないけれど、床と壁の様子を見て崩れないかと心配に思うのも無理はなかった。
つづいてエリが部屋から出てきた。そして廊下を見渡しているリラに言った。
「広いね」
「うん。こんなに広いの見たことない」
二人は並んで歩き――エリは浮かんでいるが――だした。リラは周りをキョロキョロと見ながら、エリはじっと真っ直ぐを見つめながら、スタスタと歩いていくとまもなく行き止まりにぶつかった。そのえらく高い壁をひっくりかえりそうになるぐらい見上げたあと
「でも、すぐ行き止まりだよ」リラが苦笑いを浮かべながら言うと
「ね」とエリは楽しそうに返事をした。。
そこで二人はさっきの扉のことがあったので、リラが下をエリが上をと持ち場を決め調べてみることにした。それでエリが持ち場につくため、壁沿いをまるで透明なエレベーターに乗っているかのようにふーっとなんなく上がっていくのを見て、リラは「はー」と感心した。それもこれまで彼女がああいうふに移動していくのをなんどか見たとはいえ、この高さをなんの助けもかりずひとりでのぼっていくのを実際に目にしたら無理もないだろう。
そんなふうにポカンと口を開けてエリの様子を眺めていると、ふと「ああやって幽霊が本当にいるならもし高所恐怖症の人が幽霊になったらどうなるんだろう?」とそんなことが頭のなかをよぎっていった。
そしてすこし考えてリラは心のなかでつぶやいた。
「ちょっともったいないかも」




