エピソード3:彼女は……?
彼女はいったい何者なんだろうか? 怪しんでとか不審に思ってとかではなく、ただ純粋にリラは気になった。どこに住んでいたのか、何をしていたのか、どうして死んでしまったのか、病気でなのか事故でなのか……。一度考え始まると、あれもこれもが気になってきてしまう。でも、やっぱり聞きづらい。年齢はあの時、興奮した勢いで聞いてしまえたけれど、ある程度落ち着いている今では『もしあたしがいま死んじゃったら……』とその時のことを想像してしまう。
「だって……」とリラは思う。「お母さんとお父さんも学校のみんなもそうだし、おじいちゃんおばあちゃんだって……まだクリアしてないゲームもこれから出るゲームも、行ってみたい場所だって食べたいものだって……」
すぐには思いつかないけれど、いまある知っているまたは知らない色々なものも、近い将来あるいはもっと遠い未来の現在では夢のようなことも、そういうたくさんのものやことからもう全部なかまはずれになってしまう……いや、なってしまったのはどんな気持ちなんだろうか。想像しただけでも胸がつまってしまいそうなほど苦しいのに。
そんなふうなことを考えているリラのもとにエリは静かに帰ってきた。しかし、リラは考えごとに夢中なのでそのことにまったく気がつかない。そこでエリはどうやったら気がついてくれるだろうかと頭をはたらかせて、まもなくひとつのアイデアがピンとひらめいた。そしてさっそく実行に移った。まずエリはもういちど気づかれないように音をたてずに扉のむこうに行き、次に地面を潜ってちょうどリラのいる場所の真下へとやってきた。この時リラは扉に寄りかかってうつむき加減でもんもんとしていた。もう場は完成している、あとはなにかきっかけがあれば……。そのきっかけはあんがいすぐに、それもリラ自身が作り出した。
「……そういえば、エリはどうしたんだろ? けっこう待ったと思うんだけど」
リラがそう言うやいなや、エリは地面からにゅっと両手を生やして、その冷やっとした手でもってリラの足首をガシッとつかんだ。
「――――!!!!」
その光景に、その冷たさに、リラは心臓をバズーカ砲で発射したかのように驚き、そして驚きのあまり叫びは声にならなかった。さらにエリは、ぶったまげているエリの足元から、頭を芽吹かせた。そして二人の視線は――リラの大皿のように丸くなった目と、エリの光の届かない深海のような静かで深い目が――ぶつかった。




