四.(俺?)=(アイツ?)
コイツは・・・・。
「・・・・俺? だ」
ああ、見間違いようがねえ。 昨日、俺は目の前のコイツだったんだから、夢と思いたいが夢じゃ無いって昨日いたいほど解ったし・・・・。
「んん、そう、アンタはアタシ」
目の前の(俺?)は交互に俺の顔と自分の顔とを交互に指して頷いている。
「意外と物分かりが良くて助かる。流石は腐ってもアタシっわけね」
満足気に両手を前に組んでうんうん頷いている目の前の俺?
てか、腐ってもってあんまいい言葉じゃ無いな。女の子にはあんまり言って欲しくないかも知れんぜ。いくらコイツが俺でも・・・・・・・・??
「んん?」
「??? どったのよ? いきなり真面目の腐ったみたいな顔して」
「いや、あのな」
目の前の俺?をまじまじと見てみる。
「なんで、俺が俺の目の前にいるんだ?」
そうだよ。俺はここにいるのになんで目の前に俺がいるんだ? ん? よく考えたらとんでもない事が起きてんじゃね!?
「え? 今更そこなの?」
なんだかとってもあきれたご様子の俺(♀) 結構長めな黒髪を託し上げてポリポリしてる。
「て、言われてもな・・・・お前はなんでこんなことになってんのか解んの?」
「や、解んないけどさ」
なんだいそりゃ!
「お前も人のこと言えないじゃねえか!」
「うるさいなぁ。アタシもさっき起きたばっかで実は軽く混乱してたりすんのよ」
ハァ、とため息ひとつな俺(♀) うわぁ~、ひとには軽くあきれた態度とって自分はそれかよ・・・・。
ホントにコイツは俺? 俺ってこんなキャラだっけ?
ま、そこらはとりあえず置いとくとして。
「さっき起きたって、お前どっから起きたのよ?」
俺の部屋にはいま俺が座ってるベッドしか寝るところは・・・・・・・・!!?
「おい、それはちょっとマズインジャネ!?」
いくら俺自身といっても性別違ぇしっ!?
「なに考えてるか知らないけどキモい妄想はやめてね」
「え? ああ、ハハ、妄想なんて・・・・しないさ」
「・・・・なにさ、いまの間は、まさかマジで」
「自分にそんな妄想するわけ無いってもんです!?」
「・・・・・・・・ま、いいけどさ」
フゥ、焦ったぜ。実はちょっとだけ考えてたりして・・・・。
なんか若干胡散臭そうな目を一瞬俺に向けてから、俺(♀)は話を進めた。
「なんかアタシの部屋はあっちになってるみたいなのよ。ほら、隣にあったじゃん。物置部屋が」
「ああ」
そういやあったな隣にそんなもん。親父と母ちゃんの青春のガラクタ置き場になってから、記憶の底に存在を沈めてたけど。
「そこがアタシの部屋になってるみたい。なんかよくわかんないけど」
「へ~、そうなんか。ん? じゃぁあのガラクタの山はどこへ?」
「さぁ?」
俺と俺(♀)は首を傾げる。
ま、さして重要な事じゃなし。気にしない気にしない。
「ん、ま、他の部屋から起きてきたなら良し。俺はまたひとつのベッドにキュウキュウ詰めになってたのかと一瞬思ったぜ。そのデカパイが背中に当たってたのかと、ハハハ!」
ほんとお馬鹿な俺。ま、自分の胸が当たっても嬉しくは・・・・・・うん、嬉しくは・・・・無いはず。
「・・・・・・・・」
「ん? なんだよ急に黙って」
俺の言葉を無視して俺(♀)は机へと移動し
「うん、これでいいかな」
と言って徐に野球のボール(はて、何故そんな所に?)を手に取ると
「ふしっ!!」
いきなりアンダースローで俺にぶん投げてきやがった!
「うウェェイッ!?」
自分の物とは思えない奇声を挙げて頭を抱えてブロック。
バンッ! とボールは壁に当たって明後日の方向に飛んでいった(どうやらゴム製だったようです)
「チッ、コントロールが」
手をプラプラさせて舌打ちする俺(♀)
「あにすっだよオメエよっ!?」
流石にキレた。
「大きいの気にしてんのよ!!」
あっちもキレた。
「だ、だいたい女の子に向かってデ、デカ。最低最低、超サイテイ!?」
「だからって人にボール打つけていい理由になるものかよ!良い子が真似したらどうすんだよ!!」
「良い子なんてここにはいないの!」
「はい、挙げ足取りいただきました! あ、ああ! そういやテメ! 目覚まし時計ぶつけたよな!」
「しょうがないっしょ! アンタ起きないんだもん!!」
「下手したら死んでんよ!?」
「いいじゃん! ピンピンしてんし!!」
「いいわけあるか! デカパイ女!!」
「デ、デカパ、言うなああっっ!!?」
ええと、後から考えたらお互いにわけが解らなくなってたんだと思う。
いつの間にか俺達は取っ組み合いになってまして
「うるさい! 近所迷惑!!」
母ちゃんが止めに入るまでやっていた。
「全く、休みだからって朝っぱらから喧嘩して!」
母ちゃんは朝からとても機嫌が悪かったようで
「外出て二人とも頭冷やしな!!」
俺達は外に放り出されてしまった。
「で?」
「・・・・なに」
「なんで俺ら仲良くドーナツ食ってんだよ」
俺達はいま近所の有名ドーナツチェーン「マスタードーナツ」通称マスドにて向かい合ってコーヒーを啜っていた。
「別に仲良くじゃ無いけどね」
コーヒーを机に置いてため息をひとつな俺(♀)
「ママに追い出されたから朝食の代わりに食べにきたんでしょ。割り引き今日までだったからちょうどいいからって」
まぁそういう流れで来たんだったなそういや。
「まぁ、頭を冷やすのにはちょうど良かったけど」
フレンチクルーラーを口にしながら俺(♀)はうんと頷いて
「別にケンカするためにアンタの部屋に行ったわけじゃないし」
「ああ、俺もオマエとケンカしたいわけでもないし」
ということで一時仲直りだ。俺自身に聞きたいことあるし
俺達はとりあえずの握手を交わした。
「提案なんだけど、アタシらそろそろ名前で呼ばない? お互いに名前は知ってるわけだし。いつまでもオマエとアンタだとなんかね。一応、アタシら兄妹てことになってるみたいだし」
「ん、そだな。ええと、オマエは朱音で」
「アンタは暁だったわよね?」
「おう」
「イエス」
お互いに親指を起ててニッと笑った。
流石は同一人物。結構ツーカー?
「んじゃ、朱音。早速聞きたいのだが」
「ん? なによ?」
いやぁ、気になって気になって仕方なかったんだよな。
「そのスカート。ちと短くね?」
「・・・・・・・・」
あれ?
「ちょっと・・・・舌の根も渇かぬうちに」
といって窓側にススッと移動する朱音。瞳にはちと警戒の色が・・・・て
「いや、見ねえし! 見えないし!! 変な目で見たわけじゃねえから!!?」
ヤバヤバ、自分に警戒されるってどうよ俺。てか、指摘してなんかまずかったか? 一応、コイツ俺だから軽くいっただけなのよ。
「むぅ、一応信じるけど・・・・自分自身に欲情してるとか考えたく無いし」
欲情って。ちょいとお前さん?
「でも、今度から変なこと言わないでよ?」
「変なことって。ちょっと気になっただけだよ。自分が短いの履いてると思うとあれだなぁと考えるとなぁ・・・・」
「あれって?」
「あれは・・・・あれっといったらあれだよ」
「だから、なんなのよ。はっきり言いなさいよ」
わっかんねえかな? てか、なんで不機嫌な顔してんだよコイツは。ああ、とりあえず軽く俺の意見を言っとくか。
「できれば、そのミニスカートっちゅうもんを履かないで欲しいんだが。履くんならロングなロング」
「やぁよ、アタシ可愛いミニ好きだもん」
俺の意見を却下しやがった。
「それにこれぐらい普通っしょ?」
「や、普通かそれ? 俺には恐ろしく短く見えるんだが?」
「そんなことないよ。アンタが、暁がおかしいの!」
拳を机の上にトンと作って身を乗り出して言葉じりの力を上げると朱音。
近えよ。自分の席に戻れ戻れ・・・・・・・・ん?
「なんだお前。化粧なんかしてんの?」
近づかないと気付かなかったが、朱音はどうやら薄く化粧をしているようだ。
「それが何よ?」
「や、なんで化粧してんのかなと。別に誰かに会うわけでもあるまいに」
「?? そりゃ外に出るときはメイクぐらい普通にするわよ」
「や、だからなんで?」
「・・・・なにかあるか解らないじゃない」
「なにかって、なにが?」
言ってる意味がわからんな?
「もう! メイクぐらい普通にするって言ってるでしょ!!」
何故、キレる!?
「だから、なんで普通にメイクすんだよ?」
「あのねぇ!」
「??」
「アタシ! 一応、女の子! 女の子なら普通にメイクぐらいするの! 暁は男の子だから解んないの!!」
「そ、そんなもんなのか?」
「そんなもんよ!」
う~ん、女の子ってのはめんどくさい事を普通にやるんだな。 おんなじ人間でも性別が違うと普通にやることも違ってくんのか?
「なんか、女って結構めんどくさいのなぁ」
いやほんとに
「アタシには男の子のほうがめんどくさそうだけど。て、そんなことよりも、アタシらもっと話さなきゃいけないことがあるでしょ!」
「話さなきゃいけないこと?」
「そうよ、先ず――」
と、朱音が話そうとしたとき。
――コンコン
と、ガラスを叩く音が横から聞こえる。
「「ん?」」
俺達は同時に横を見た。
ガラス越しの外側に片手を挙げる見知った顔がすぐ近くにいた。
「おろ?」
なんだ、こんなところで会うとは。
久しぶりに投稿をしました。
自分なりにこう書きたいというビジョンがあります。
しかし、理想どおりに進めるのって難しいですね。
色々と回り道をしまくってますが、完結できるよう頑張りたいです。
こんな自分の作品の続きを待っていたかたがもしもいたら謝りたいです。
間が空きすぎてごめんなさい。