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二.これは・・・(夢?)


よし、風呂入った。歯も磨いた。テレビも今日はもうない。

と、いうわけで


「寝るか」


今日は色々と疲れたからねぇ。早く寝て忘れるとしますか。


とと、その前に


俺は寝る前の軽い儀式をば。


俺の部屋に貼りつけてあるグラビアアイドル小田切 メイ<おだぎり めい>のポスターを眺めながら俺は拳を突き上げ


「明日もがんばりましょい!!」


と気合いを入れて叫んだ。一階から両親の苦情が聞こえるが気にしない。


だって俺もう寝るし。


良い夢見れるかなぁ。おやすみ〜。


疲れていたのか俺の意識は速効で落ちていった。


−−−−−





−−−チチチ


遠くで雀の鳴き声が・・・・てことは朝かぁ。我ながらグッスリだったようだな。


うし、起きるか。


・・・・なんか体が重いような気がする。 なんだろう、軽く押し潰されるような感覚が・・・。


ええい起きなきゃ遅刻。起きなきゃならんのだ俺! だらけるな立ち上がれ!!


『オイショッ!』


俺は振り子のように体に反動を付け起き上がった・・・の、だが。


(今の・・・誰だ?)


俺の耳にこの部屋に響く事の無い。何と言うか・・・・可愛らしい声が。


『なんだいまの』


・・・・・


『ん?』


んん!


『ちょっ! これ』


俺の声か!?


何だなにが起こった。何で俺、こんなに声高くなってんの!!


『ん、んん!?』


何か胸の辺りに違和感が・・・・何か重い。 ふと下を見てみます。


・・・・・・


何かが邪魔をして見えません。


何だろうかこのサッカーボールみたいな物体は。重さの原因はこれか?

パジャマのボタンを胸元まで外してみた。


・・・・・・


付いてるね体に。継ぎ目無く、自然に。


コレを突いてみた。

柔らかい。なんというか、感覚がある。


・・・・えと、これは。


『胸の谷間・・・・タニマ!?』


え、え、なにこれ!? なにこの声!?

てか、俺なんで女物のパジャマ! 心なしか目線がいつもより低いような・・・・て、部屋もなんか違う!?


『ぽ、ポスターがメイちゃんじゃない』


見たことも無いイケメンのポスターにチェンジしてる。

ポスターの横にこんな洒落た鏡なんて無かったし・・・・ん、鏡?


俺は微かに映ったものに驚いて振り返った。その際、俺の顔に髪が当たる。

俺の髪が伸びてる。


そして、唖然とする俺と同じように鏡の中の人物も唖然としていた。


そこにいるのは目をパッチリと見開いて驚く、ロングヘアの巨乳ちゃんの姿があった。


てか・・・え・・・・・コレ・・・・オレ?


『ナンダコリャアアアァァッッ!!?』


俺は思わず絶叫した。


俺の絶叫に朝から何事かと部屋の前まで来たが俺はがっちりとドアノブを掴んで


「な、なんでもない!」


と無理矢理乗り切った。


「ふぅ、母ちゃんに息子のこんな姿見せられないも、ん? な?」


と、汗を拭った所で俺はふと気付いた。


声が違うのに母ちゃんは気付かなかったな? それにやけにあっさりと戻って行ったのもなんだか都合が良すぎる。


「ん? ああ、そうか。なるほどな」


俺は一つの結論にたどり着いた。これならなにもかもが納得がいく。


「これは・・・夢だ!!」



そうだ夢だよ。なんかおかしいと思ったんだ。ハ、ハ、ハ。

そう思うと気分が楽になって来た。なんだか視野も広くなってここが俺の部屋と同じ間取りだと気付く。ひとつひとつの小物が違うだけなんだな。



ほら、白いカーテンになってるし勉強机の上には乱雑に置かれたマンガの山では無く。俺には全く縁の無い化粧品が少し雑に置かれていて、中古テレビの下のラックには

「アメ〇ークコレクションDVD」ではなく。なんやらようわからん恋愛物の洋画とか邦画のDVDに変わっている。


ハハハ、夢だ夢だ。ちょっとリアルで驚いたけど完全に夢だ。

ん〜、夢なら覚めるんだよな。


そう考えると何か勿体ないぞ。


「よし、目が覚めるまでこの夢を楽しもうではないか!」


とりあえずは下に降りてみるか。



「お、おはよ〜」


下に降りて恐る恐る母ちゃんに挨拶。

いや、夢だとわかっていてもこの姿で会うのは少し緊張ですわ。


「ん? ああ、おはよう」


だが、母ちゃんはいつもどおりの素っ気ない挨拶だ。ま、当たり前か、この夢じゃこの姿が本当の俺だもんな。


「ああ、そういえばさっきのあれは何事? お父さんもびっくりしてたわよ」

「あ、うん。ちょっと怖い夢みて寝ぼけてた」


思い出したように先ほどの絶叫について聞いてくる母ちゃん。それに対して苦しい言い訳をする俺。


「ふーん、ま、いいわ。ご飯すぐに用意するからその間に着替えな。きびきび動かないと友達待たしちゃうわよ」


母ちゃんはさして興味もなかったようで、顎でハンガーに掛かった制服を指すと台所作業に戻っていった。


うーん、さすがは夢。適度に都合がよろしい。


「どうしたのよ? 納得したような顔をして?」

「や、なんでも。さ、着替えましょう〜」

「まったく、今日は変な子だね」




「・・・・うむ」


予想通りだったが、やはり制服は女子の物か・・・・そりゃそうだ、いま俺は女だし。

コレに袖を通すのは結構な勇気が必要だが・・・・ええい! これは夢だ! 別に女装をするわけではない! 問題無い!

俺は意を決してパジャマを脱いで下着姿になった。


「・・・・やっぱ、下着も女物だな・・・・・・」


やっぱりちょっとショッキングだなこれは・・・・・。




えーと、ブラウス装着、ネクタイ装着。うん、ここまでは男子の制服とさほど変わりはないな。

さて、問題は・・・・。


「・・・・母ちゃん」

「ん? なに? なにか用意して無かった?」

「や・・・そうじゃなくて」

「???」

「・・・・・スカートって、どう履くの?」


そう、問題はこのスカートだ。履き方なんて履いたこと無いからわかんないんだなこれが。


だが、そんな俺の深刻な質問に母ちゃんは溜め息ひとつでこう返した。


「あんた、なに馬鹿な事言ってんの?」


バッサリすか! けど、この反応が普通だよな・・・・。


ええい、ままよ!

このまま履けばいいんだろう!


俺はやけくそ気味にスカートに片足を突っ込んだ。


そして−−−


「よし、これでどうだい母ちゃん」


ふぅ、我ながらよく履けたもんだ。テレビとかで見たのを見よう見真似でやっただけだが、ま、問題は


「あんた、痴女にでもなるき?」


あ、アレ?


「ファスナー全開、パックリ開いてパンツ丸見え。 ついでに後ろ前」


「へ? ほ? ワッツ!?」


次々と挙がる母ちゃんのご指摘に俺は慌てて反応。


確かに横のファスナー(てか、こんなの付いてんのか!?)全開。横パン大開放。ポケットに手を突っ込むと後ろへと手が差し込まれます。


「あ、ハハハ。速攻!?」


俺は慌ててスカートを脱いで瞬間シャツとソックスになり、スカートを片足で回転させて一気に引き上げる。

ホック止めた!

はい、ファスナーをグイッと上げて−−−!?


「イタイイタイイタイ!? パンツ、パンツと肉挟んだ!?」


勢い余ってパンツと太股がファスナーに巻き込まれてしまった。


「朝っぱらからなにやってんのあんたは・・・・・」


ひとりコント状態の俺に母ちゃんは呆れながら

「キャベツの味噌汁」をそっとテーブルの上に置いた。







で、ひとりコントな着替えと母ちゃんの朝ご飯を平らげてようやく登校するため外に出たのだが。


・・・・あー、なんだな。今まで端から見てた時はなんにも感じなかったのだが・・・ん−、個人的な事だが


「落ち着かない・・・・スースーしてすごくオチツカナイ!」


そう、この短いスカートというものが落ち着かないのだ。下から風が突き抜ける感じが・・・・もう、ね。


「なんだよこれも〜、よくこんなので外に出れるよなぁ。女の人は凄いよ。俺はもういまの時点で恥ずかしくて死ねる!?」


なるべく風が通らないようにスカートを引っ張ったりしてみるけど・・・やっぱりスカートが短い。とても全体をカバー出来るとは思えない。

くそ〜、男の時は短いの大歓迎だったのに、いまはとてもとても。 今まで不可抗力ながら見えてしまっていた数人の方々に本気で謝りたい気分だ。


とりあえず、学校に着いたらササッとジャージを履いてしまおう。正直、見ていてあまり好きではない恰好だったが、今は早くあのフルチューン装備になりたいぜ。


「−−−い。あれ?通り過ぎ−−−−」


ともかく人目の余り付かないうちに学校へ−−−−


「おーい、聞こえて−−−−」


ん? 待てよ? ジャージあったか? いや、これは夢なんだから都合よく−−−


「おい、て、ば! ちゃーんと聞こえてますかぁ!」


・・・・んん? なんかさっきから声がするような? 誰かいる?


ふと、声のするほうを見ると


「お、よーしよし、やっとこっちに気付いたな」


「え!?」


そこにはニッと笑顔なショートカットの少女がひとり。


その少女とは


「き、菊池。 菊池 事うっ!?」


紛れも無い。夢の中でも変わらない。小顔のショートカット菊池 琴。俺の惚れた菊池 琴だ。


「何よ? いきなりフルネームで」


いきなりの俺の裏返った声で菊池は目をパチクリとさせている。

う、いかん。何か言わなければ


「ああ、ゴメン菊池さん」


「こぅら」


「フギュッ!?」


いきなり鼻を摘まれてグリグリされてしまった。


なんだ、何か間違ったか!?


「いつからそんな他人行儀だ〜」


顔を近づけて目を見てくる菊池。か、顔がチカ!? 息が、掛かる!?


俺の心臓はバクバクだ。だが、菊池を知ってか知らずか。さらに顔を近付け


「あたしの名前を言ってみ?」


と、聞いてくる。


「え、菊池・・・琴でしょ?」


「はい、リピートはしただけで名前を言ってください佐東 朱音<さとう あかね>さん」


え、えっと、それってつまり・・・・は。


「こ、こと?」


俺がそういった瞬間、至近距離で満面の笑みを浮かべて


「やっと言った。まったく、大親友を他人行儀な呼び方す・る・な!」


額と額をゴチンとぶつけて来た!


「う、チィッ・・・!」



じ、地味に痛い。けど、それよりも今の言葉は!?


「だ、大親友?」


「ん? 呼んだかい大親友」


「き、琴と、お、あたしは大親友?」


「何を当たり前の事を言っているの。朱音?」


「・・・・・・ぁっ」


こ、言葉が出なかった。





「なに、ちょっと、どうしたの朱音? 調子でも悪いの?」


放心状態の俺に菊池が不思議そうな顔で再び俺の顔に急接近してきた。


「な、何でもない!」


待たして顔が近い!? 俺はググっと上半身を後ろに反らした。


「ん〜?」


やば、なんか不自然だ。


「ほ、ほら!元気げんき〜っと!」


俺は苦し紛れに思い切り上体をエビ反りよろしくで反らした。


「・・・・・」



やっぱ、いきなり上体反らしは怪しかったか・・・・?


「・・・・パンツ見えてる」


「ディエッ!?」


速攻スカート押さえ!!


「ふふ、冗談ですよ」

「へ?」


慌てた俺に、菊池はムフフと人差し指を唇に当てて不適に笑っていた。





「よし、いじり終了」

「は、はい?」


菊池はニンマリと唇から指を離して両手をパンパンと叩いて言葉を続けた。


「そ、わたしを置いていこうとした朱音に軽いお仕置きだよ」

「え? 置いて?お仕置き?」


な、何を言って?


混乱する俺に菊池は鼻柱に指を付けて言う。


「だって酷いでしょ朱音。一緒に学校行く約束してたのに無視して勝手に行こうとするし、なんか変な態度とるし、こっちが合わせたらまた変な態度取るし」


・・・・ああ、そうか、菊池は俺の言動をそうみていたのか? 母ちゃんが言ってた友達って、きっと菊池だ


「ご、ゴメン! ちょっと考え事してて、それで、本当にゴメン!」



俺は深々と菊池に謝った。夢の中での約束だけど、これは俺が悪いから。



「フフ、冗談だよ。怒ってないから顔を上げて」

「え?」

「なんだかんだでわたしもいじり楽しませて貰ったしね」


菊池がニンマリ笑って

「おあいこ」と自分の両手を真っ直ぐにして、お互いの頭をチョップした。


「うし、オールオッケー。学校行こうか」

「え、お、おお!」


菊池が俺の手を取っていきなりダッシュした。


「ちょっと急がないと遅れちゃう!」




「お、あのさ!」

「んん!」

「もうちょっとスピード落として話せない!」 「ん〜、十分に走ったからもう余裕か、なっ! とぅ!」


−−−ズザザッ!


と、菊池はスライディングタックルでもしそうな勢いで急ブレーキ! 俺の体は一瞬だけ菊池の頭の上まで浮いた気がした。


「と、止まるなら、一言いってから止まってくれ・・・ないかな」


俺は肩で息をしながら、菊池に言った。


「アハハ、ごめんごめん。今度は気をつけよう」


等の菊池は俺に軽く謝りながら砂埃を叩いていた。


菊池ってこんなに豪快だったかしら。俺の夢だからちょっと違うのか?


・・・しかし、夢の中でも体って疲れるもんなんだなぁ。精神的ななんとかってやつか?


「んん、どうしたぁ〜、あかね〜。さすがに疲れたか〜」


菊池が俺の夢の中での名を言う。


・・・・・朱音、か。


朝方に母ちゃんに呼ばれたのと生徒手帳の確認で名前は把握できたけど・・・・。

な〜んか、まだ違和感バリバリだよなぁ・・・・・。いや、悪い名前じゃないんだけど・・・・。


と、俺がブツブツと言っていると


「お、あそこを歩くは我らが可愛い後輩じゃありませんか」


菊池は知り合いの後ろ姿を見つけたようだ。そちらにダッシュで近付いていく。

俺もその後ろ姿を目で追っていく。


「ん・・・ありゃもしかして」


何となく見覚えのある少し遠くからでもわかるミニマムな身長と髪を四つに結わえて肩から下に降ろしているあのイヌミミヘアーは


「の〜どちゃん! おっはよう!!」


その後ろ姿に追い付いた菊池がその背中にパチンッ! と軽くもみじを作ると


「・・・・??」


あの大きなツンとした瞳が現れた。



(ゲゲッ! やっぱりお前か・・・)


俺はそっと指で顔を隠しながらその隙間からヤツを見る。


そこには鞄を両手で持ったデーモン・町田 のどかが菊池と向き合っていた。

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