封印
翌日、シュツルム家の手配した馬車でジャンヌは家路についた。
「これからがたいへんだと思うけれど、無理はしないのよ」
ジャンヌにそう言われて、アンネリーゼは深くうなずいて微笑む。
「ありがとうございます」
ランドルフ王子の婚約者候補と言うことで、身に危険が迫ることがあるかもしれない。ジャンヌはそれを心配してくれているのだろう。
「ジャンヌ様も、お身体に気をつけて」
「ありがとう」
西方へ進む馬車を見送ったアンネリーゼは、エリヤを伴い出かける。
王宮図書館で封印魔法の本を数冊みつくろい、小瓶の対処ができそうな魔法を探す。いくつか見繕い、その足で王立研究院へ行こうとした。
王宮の廊下で偶然、クリストハルトに出会う。
「おはよう。ランドルフ様に会いに来たのかい?」
アンネリーゼの背後で、エリヤがぴくりと眉尻を上げる。
しかしそれ以上の反応はしなかった。自制できるようになった様子のエリヤを見て、クリストハルトはニヤリとする。
「いいえ。図書館で探しものをしていました。先生、どうかなさいましたか?」
相変わらずのアンネリーゼに、クリストハルトは苦笑いする。
「ランドルフ様に魔法の特訓を頼まれてね」
「朝早くからたいへんですね。ランドルフ様は熱心ですのね」
熱心にさせた張本人は他人事につぶやく。
「アンネリーゼさんを守れるようになりたいのだと思うよ」
「婚約者候補のふりですのに、申し訳ないです」
クリストハルトは笑顔の下で、ランドルフ王子を不憫に思った。
「それより、毒の入った小瓶の封印をしたいので、どの魔法が最適か研究室で教えていただけますか?」
「もちろんだとも!」
ランドルフ王子と会っていくように促そうとしていたクリストハルトだが、アンネリーゼのお願いがおもしろそうに感じたので忘れてしまった。
毒の小瓶はアンネリーゼよりクリストハルトの方が魔力が強く、魔法も上手いので、クリストハルトが最上級の封印魔法をかけた。
あの男が推測通り、ロロン王国を大混乱に陥れた死霊使いの残留思念だったとしたら、毒の小瓶で何か起こるかもしれない。
そんな危険はできるだけ排除する。
「アンネリーゼさん!」
ランドルフ王子が輝くような笑顔で研究室に現れた。アンネリーゼでなければ、瞬時に心を射抜かれただろう。
「ランドルフ様」
「来月から、私も時間のあるときはこちらで勉強できるようになりました」
とても嬉しそうなランドルフ王子。
アンネリーゼはその報告に何と返答すれば良いのか悩んだ。
「おめでとうございます」
(何か違う気がいたしますわ)
「ありがとう」
アンネリーゼは自らの言葉に違和感があったが、ランドルフ王子がよろこんでいる。なので間違っていなかったのだろう。
「これからもよろしく」
「こちらこそ、よろしくお願いいたします」
アンネリーゼを挟んで、ランドルフ王子とエリヤは互いに引きつった笑顔を浮かべていた。
お付き合いいただきありがとうございました。
またいつか!




