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私の幸せ

 シャルルが全てを知っていて口をつぐんでいたとアンネリーゼは思うが、この世にいない人には確かめようがない。


(それはそれで、罪深い方だとは思いますけれど)


 多くの国民から愛された王にも、仄暗い部分がある。


 愛する妻のために、幼馴染みを切り捨てた。シャルルが断行した貴族の改革は、クラリスのためだった。


(ランドルフ様の仰言った通りですね)


 幸せでいるために、クラリスは知らずにいることを選んだ。

 これ以上幸せなところから遠ざからないために、ジャンヌは全てに背を向けて逃げ出した。


(私も生まれ変わって、探偵になりたいと行動していますもの。なりたいものになるのが、私の幸せなのでしょう)


 小瓶をハンカチで包み直す。


 中身が毒なので、クラリスに返すのは良くない気がした。


「お嬢様、どうなさいましたか?」

「小瓶の扱いをどうしようかと思って」


 アンネリーゼはちょこんと首を傾げる。


「大切な資料ですし、あの男につながるものですからこちらで預かりたいと考えているのですが」


 エリヤの後ろにランドルフ王子の姿が見えた。


「ランドルフ様、こちらは私がお預かりしてもよろしいですか?」

「ありがとう。お祖母様には私から伝えておく」

「こちらこそ、ありがとうございます」


(問題は預かり方ですわね)


 金庫に鍵をかけておいても、万が一があっては困る。


 ハッとアンネリーゼは思いついた。


「王宮図書館にまたお邪魔いたしますので、よろしくお願いいたします」


 封印魔法を調べて試してみようと考えていた。王立研究院でクリストハルトに見てもらおうと考えると、心が踊る。


 ワクワクしていたアンネリーゼだが、エリヤとランドルフ王子の様子がどこかおかしいことに気がついた。


 ランドルフ王子はなぜか得意気にエリヤを見ている。エリヤはツンとランドルフ王子のニヤケ顔を知らん顔していた。


(どうしたのかしら?)


 疑問に思ったが、追及しなかった。アンネリーゼのアンテナが知らなくても良いことと判断して、反応しなかった。


 ひとまず、誰も触らないように小瓶をアンネリーゼが片付ける。


「私はジャンヌ様のところへ行ってまいります」

「戻るまで待たせていただく。もう少しアンネリーゼさんと話したい」


 護衛をしているレイモンドは、ランドルフ王子の恋心を微笑ましく見ていた。

 しかし相方のブラントも、好意を向けられているアンネリーゼも全く気づいていない。


「かしこまりました。こちらでお待ち下さい」


 アンネリーゼとエリヤはランドルフ王子を置いて部屋を出た。


 ジャンヌの休む部屋のドアをノックする。小さな声で返事があった。


 アンネリーゼが部屋に入ると、ジャンヌは起き上がっていた。


「体調はいかがですか?」

「ありがとう。少し疲れただけよ。歳を取って、どんどん身体が言うことを聞かなくなるわ」


 ジャンヌは苦笑いを浮かべた。


「明日、帰ろうと思うの」


 静かにそう告げた。

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