再会 2
言ってからジャンヌはしまったと思ったが、こぼれ出た言葉をかき消すことはできない。
驚きで見開かれたクラリスの瞳を前に、冷静になろうと息を大きく吸った。
「デボラさんがクラリス様の代わりに殺されるように、私が仕向けました。シャルル様とクラリス様が結婚できれば、それで良いと考えていました」
ジャンヌの告白のあと、しんと静まり返る。
「それが全てですか?」
クラリスは恐る恐るジャンヌに尋ねた。
「はい」
冷静に、はっきり返答するジャンヌ。その顔を見つめていたクラリスはぽろりと涙をこぼした。
「お祖母様……」
ランドルフ王子があわてた様子で清潔なハンカチを差し出す。クラリスは受け取るとそっと頬を押さえた。
「ジャンヌ様に全て背負わせて申し訳ございません。シャルル様がいつか時が来たら話すと言っていたのは、このことだったのですね」
「シャルルが?」
ジャンヌの言葉にクラリスは深くうなずいた。
「本当は、ジャンヌ様もシャルル様がお好きなんだと思っていたのです。私がシャルル様を横取りしておきながら、だけどジャンヌ様にも嫌われたくないなんて、都合の良いことを考えていたのです。みんな、ずるい私の心の内を見透かしているのだと思っていました。だからいろんな方に意地悪を言われたりされるのも、仕方ないと」
クラリスが無垢で美しい笑顔の下でこんなことを思っていたとは、ジャンヌはつゆほども感じていなかった。
恋は盲目とはよく言ったものだ。
うろたえるジャンヌに気づかないのか、クラリスは話し続ける。
「だけどシャルル様が、ジャンヌ様だけは違う。本当にシャルル様と私の結婚を望んでくださっていると仰言った。だから私たちは幸せにならなくてはいけないと。そしていつか時が来たら、青い小瓶のことも全部話すからとシャルル様は言ったのに……」
クラリスの思う真実を知ったジャンヌは、ジャンヌの中の真実は永遠に闇に葬ることにした。
「クラリス様をずるいと責める者たちの方が、ずるい心の持ち主です。あなたはいつだって清らかで美しい人です。ずっと辛い思いをさせて、申し訳ございませんでした」
「とんでもございません。私こそ、長い間ジャンヌ様おひとりに罪を背負わせて申し訳ございませんでした。デボラさんのご家族には会われましたか? もしもまだでしたら、私も……」
どこか無邪気ささえ感じるクラリスに、ジャンヌは唇をキュッと結ぶ。
「デボラさんが亡くなったあと、悪いうわさが立って商売がうまくいかなくなり、一家離散したあとはもうわかりません」
クラリスは言葉に詰まった。
アンネリーゼはジャンヌの横顔をちらりと盗み見た。




