再会 1
アンネリーゼがランドルフ王子の婚約者候補という設定がまた役に立った。王子とふたりの護衛と一緒に、クラリスがシュツルム家を訪れる。
シュツルム家総出でランドルフ王子たちを出迎えた。ジャンヌも夫が選んでくれたドレスに身を包み、クラリスを待っていた。
「クラリス様、お久しぶりです」
国母となったクラリスに、ジャンヌは深々と頭を下げる。
「ジャンヌ様……」
よそよそしいジャンヌにクラリスは戸惑う。ジャンヌの罪悪感は時間を超越できなかった。
ヴィリバルトが先頭で応接間へ客人を案内する間も、クラリスとジャンヌは一言も交わさなかった。互いにどう切り出せば良いのか悩んでいると表情でわかる。
応接間で、クラリスとジャンヌは向かい合わせにイスに座る。
執事が紅茶とお菓子を用意し終わったところで、アンネリーゼたちは部屋を出ようとした。
「もう少しいてくださらない?」
クラリスがおずおずと孫を引き止めた。アンネリーゼとランドルフ王子は顔を見合わせる。
「そうしてもらえるとありがたいわ」
ジャンヌも迷子の犬のような目でアンネリーゼを見る。
アンネリーゼとランドルフ王子だけ、この場に残ることにした。
しばらく沈黙が続く。クラリスとジャンヌはお互い下を向いてしまっている。ランドルフ王子は何か言葉を探していたが、アンネリーゼはしれっとお茶を飲んでいた。
アンネリーゼの隣に座るジャンヌが膝の上で拳を作って、勇気をためているのを知っていたからだ。
「クラリス様」
覚悟を決めた声に呼ばれたクラリスは顔を上げる。今日初めて、ジャンヌとクラリスは目が合った。
ジャンヌはすっくと立ち上がる。
「青い小瓶を置いたのは私です。毒かもしれないと思いながらも、私の弱い心がそうしました。どのような罰でも受ける覚悟はございます。ずっと黙っていて、今さら謝って許されるとも思っていません。けれど、謝らせてください。本当に申し訳ございませんでした」
深く頭を下げて、ジャンヌはそのまま動かない。
「頭を上げてください」
クラリスに言われて、ジャンヌは姿勢を正す。
ジャンヌの目に飛び込んで来たのは、今にも泣き出しそうなクラリスだった。
「私こそ、本当にごめんなさい。ジャンヌ様があんなにも気を使って励ましてくれていたのに、自分の世界に閉じこもっていました」
「違うの。あなたが落ち込んでしまうきっかけを作ったのも私で……っ」
クラリスの大きく見開かれた瞳に、ジャンヌはハッと息を呑んだ。




