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記憶と証拠

「これを着けるの?」

「はい」


 アンネリーゼたちの泊まる部屋にジャンヌを招き、ポリグラフ検査の装置を着けるようにお願いした。


 ジャンヌは脳波を調べるリングを手に取っている。その左手の薬指には結婚指輪があった。


「これで何をするの?」

「ジャンヌ様の記憶を調べさせていだきたいのです」

「記憶を調べる?」


 ジャンヌは怪訝そうにアンネリーゼを見る。


「装置をつけて、質問に全ていいえでお答えいただくだけですので、お願いいたします」


 もし断られた時は、アンネリーゼの推理をジャンヌにぶつけるつもりでいた。


「私の記憶を調べてほしいとクラリスに頼まれたの?」

「いいえ。私の判断で、ジャンヌ様に会いに来ました」


 きっぱりアンネリーゼは言い切る。


 ジャンヌは両目を閉じて深く息を吸う。覚悟はできた。


「やりましょう」


 すぐさまアンネリーゼはエリヤとクリストハルトと共に、ポリグラフ検査の準備を進めた。


「クラリス様の枕元に、何か置きましたか?」

「いいえ」


「置いたものは、赤い瓶ですか?」

「いいえ」


「黄色い瓶ですか?」

「いいえ」


「青い瓶ですか?」

「いいえ」


 古い話だが、ジャンヌははっきり憶えていた。


 枕元に置いたことと、青い瓶に反応がある。


 こんな調子でいくつも質問を重ねていく。


「ありがとうございました」


 アンネリーゼとエリヤはジャンヌから装置を外す。


「あんな昔のことをどうして調べているの?」


 アンネリーゼはピタリと動きを止めた。


 ジャンヌはアンネリーゼの質問内容から何について調べているのか察しがついたようだ。


(ここまで協力してくださったのですから、お話しても大丈夫でしょう)


「クラリス様から、青い小瓶の謎を解いてほしいと依頼がありました」


 言いながら、ジャンヌの指紋を採取するための道具を出す。


 ジャンヌは指紋を取ることもすんなり許してくれた。照合すると、やはり小瓶に残されていた三種類の指紋の内のひとつはジャンヌのものだった。


「失礼ですが、青い小瓶の中身はご存知でしたか?」

「毒なのかもしれないとは思ったわ」


 ジャンヌは言い逃れをするつもりはないようだ。


「あなたはあの男の血縁者かしら?」


 ジャンヌはクリストハルトを見て質問をする。


(やっぱりそうなのね)


 アンネリーゼはそう思ったが、一応確認をする。


「あの男と言うのは……」

「私に小瓶を渡した男」


「僕はクリストハルト・フリージンガー。あなたの言う男とは何の関係もないですよ」


 クリストハルトはひょうひょうと答える。


「フリージンガー公爵家の……」


 さすが、王族と仲の良かった公爵令嬢だ。すぐに思い当たったらしい。


「失礼いたしました」


 ジャンヌはクリストハルトに対して頭を下げる。


「かまわないですよ」


 クリストハルトにとって、ジャンヌは好ましい部類の人間らしく、対応が柔らかい。


 ジャンヌはアンネリーゼに向き直った。


「アンネリーゼさんはどこまでわかったのかしら?」

「これでほとんどわかりました。確認のために、私の推理を聞いていただけますか?」

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