ポリグラフ検査
「新しい捜査道具?」
「はい。ジャンヌ様に使う前に、先生で一度実験させていただけますか?」
「もちろんだとも!」
新しいもの好きなところは普段のクリストハルトらしい。実験台になるのを嫌がらない。むしろ嬉々としている。これも今まで通りだ。
(私の考えすぎでしょうか)
アンネリーゼの部屋にクリストハルトを招いた。エリヤとアンネリーゼのふたりで、イスに腰掛けた天才魔法使いに器具を装着していく。
つけられている間もクリストハルトは子どものように目をキラキラさせていた。
「これから私が先生に質問をしていきますので、全ていいえでお答えください」
「了解」
クリストハルトはごきげんな笑顔でうなずいた。
少し緊張しながら、アンネリーゼは質問していく。もちろん、周囲には悟られないよう淡々としている。
誰にでも当てはまりそうな質問はしない。アンネリーゼとこれまで共有した記憶について問う。そこにウソも混ぜる。
精査できていないが、表れる反応を見ている限り間違いなくクリストハルト自身だ。
それにしても、自分の魔法ながら便利だ。どれも前世で使ったことのない道具なのに、使い方はわかるし、検査結果の見方もわかる。
エリヤはちらりとアンネリーゼを一瞥する。口に出さないが、アンネリーゼが何かおかしいことに気づいていた。その理由がクリストハルトであることも。
いけ好かない男ではあるが、アンネリーゼは彼を信頼している。確かにいつもと少し様子が違うようにも感じられたが、これぐらいは誤差の範囲なのではないかとエリヤは思う。
エリヤには魔力がないので、アンネリーゼの感じるクリストハルトの違和感を察知できない。それは決してエリヤが弱いとか、役に立たないと言うことではない。
一通りの検査を終えた。
装置を外すためにアンネリーゼはクリストハルトに近づく。問題ないとアンネリーゼは自分に言い聞かせるが、まだ少し緊張していた。指先が強張っている。
「大丈夫だよ」
そう言って不敵に微笑むクリストハルト。
アンネリーゼの不安をわかっていたようだ。
「すまないね。あちらがおもしろい反応を示すからちょっと調子に乗ってしまった。だけど僕では彼は姿を現せないみたいだ」
やれやれと言いたげにクリストハルトは首を左右に振る。
「小瓶がジャンヌさんの仕業だったら、どうすれば会えるのか聞いてみよう」
すっかりいつものクリストハルトなので、アンネリーゼは安堵した。
「で、これで僕の何を調べていたんだい? 質問を全ていいえで答えるところから察するに、ウソを見抜けるのかな?」
「ウソを見抜くと言うより、記憶を確かめるものです。生理現象の反応で確認します。ただ、五十年も前のことですと記憶が曖昧だったり、忘れていたりするかもしれません」
(だけどジャンヌ様はきっと、クラリス様とのことは忘れていないと思うわ)
「アンネリーゼさんの記憶はおもしろいね。こんな機械のある世界か」
クリストハルトは頭につけていたリングを手に取ってまじまじと見つめる。とても楽しそうだった。




