王宮図書館
アンネリーゼとクリストハルトは、カミーユから聞いた少ない情報とこれまでのことであの男のことを推察をした。
あの男は、目に見えない何かに惹かれて現れる。本人は契約だと言っていたが、ひとりしか面倒を見られないのは彼もどうすることもできない縛りのようなものだろう。
人と神の狭間の存在。ゴーストやモンスターに近いと考えれば、どこからともなく現れることも一応は説明がつく。
本人は直接手を下すことはない。できないのかもしれない。
ふとアンネリーゼは思いつく。こんな時こそ、あの特権を使うべきだと。
「王宮図書館へ参りましょう」
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見渡す限り、書架が並んでいる。
ロロン王国の書物を集められるだけ集めた場所、王宮図書館。
表に出すことのできない禁呪を集めた本も、ここなら探せば出てくる。
アンネリーゼの背中に翼がはえて飛んでいきそうなくらい、彼女は浮かれていた。
「お嬢様、お顔が」
エリヤにこっそり教えられて、つい緩んだ表情になっていたと気付いた。
いつもの冷静沈着キャラにすんと戻る。
「参りましょう」
探すのはロロン王国、特に西方の伝承についての書物。
さすがに王宮の職員たちは上品だった。
ランドルフ王子の婚約者候補にいちいち騒いだり、取り入ろうとしたり、邪険に扱ったりしない。
「アンネリーゼさん」
誰かがアンネリーゼが来ていると報告までしてくれたようだ。ランドルフ王子がブラントとレイモンドと共にやって来た。
「ランドルフ様。いろいろとお計らいいただき、本当にありがとうございます」
アンネリーゼはランドルフに深々とお辞儀をする。
「とんでもない。カミーユ容疑者との面会に危険はありませんでしたか?」
「先生が同席してくださいましたので、問題ありませんでした」
図書館に入れて浮かれているのを押し殺して、アンネリーゼはランドルフ王子と会話していた。
普段よりアンネリーゼが明るいようにランドルフ王子は感じた。どうしてだろうと考えたが、王宮図書館に入れたからだとすぐに察する。
「ランドルフ様は何か図書館にご用事ですか?」
「今日の予定は終わりましたので、アンネリーゼさんのお手伝いができればと思い、参りました」
王家で一番美しいと言われるランドルフ王子が、極上の甘い微笑みをアンネリーゼのためだけにたたえる。少しでもアンネリーゼに気にかけてもらいたい。
「ありがとうございます。それでは早速ですが」
エリヤが常に側にいるアンネリーゼには、美しさと言う武器が通用しなかった。
ランドルフ王子の言葉を額面通りに受け取り、アシスタントにしてしまう。
ロロン王国にある伝承や言い伝えで、あの男に当てはまりそうなことの書いてある書物を集めた。




