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クリストハルト

「先生に会ったジャンヌ様を見たいのです」


 アンネリーゼは表情、目の動きや仕草でその人の心を見透かす術を持っている。

 それも前世の記憶だとエリヤはアンネリーゼから聞いていた。


 クリストハルトを連れてジャンヌと会えば、あの男と会ったことがあれば何か反応があるだろう。


 エリヤは深くうなずいた。


 たとえジャンヌがアンネリーゼやブラント並に表情が動かないタイプでも、アンネリーゼは読み取る自信があった。


 なんとかクリストハルトを説得しなくてはならない。


(先生はおもしろいと思えば力を貸してくださいますから、上手にプレゼンできるようにがんばりましょう)


「西方へ行く前に、気は進みませんがカミーユさんに面会もしたいです。少しでもあの方の秘密がわかれば良いのですが」


 小さくため息をついたアンネリーゼの髪を、エリヤは再び梳かし始める。


「お嬢様なら、きっとあの男の謎も解明できます」

「ありがとう。期待に応えられるよう、がんばりますわ」


 フフ、とアンネリーゼは小さく声を出して笑う。

 エリヤとこうして過ごす時間は、とてもリラックスしていた。


 一方、アンネリーゼの髪に触れられるのはいつまでなのかと、エリヤの胸に淡い寂寥がよぎっていた。




 ✙✙✙✙✙✙✙✙




「僕も西方へ一緒に行くよ」


 まだアンネリーゼから何も言っていないのに、クリストハルトにそう言われた。


「昨日ちょっと王宮に用事があったからついでにランドルフ様に会ったんだけど」


(ランドルフ様が()()()だなんて、先生はやはりすごい方ですね)


 アンネリーゼは半ば感心、半ばあきれながらクリストハルトの話を聞いていた。


「エリヤくんの言ってたジャンヌさんがクラリス様の親友だったジャンヌ様で間違いないみたいだから」


 こんなに早く調べがつくとは。やはり持つべきものは権力を持った協力者だ。


「あと、ランドルフ様が拘置所のカミーユさんと話せるように取り計らってくれたみたい。はい、これ」


 王家の紋章の封蝋が施された封筒を二通、無防備に手渡される。ひとつはアンネリーゼ宛、もう一通は拘置所の所長に宛てたものだった。


「最近のランドルフ様は仕事が早いね。魔法の上達速度も上がってるし、いい傾向だ」


 クリストハルトはちらりと意味ありげにアンネリーゼを見やる。手紙を読むことに集中しているアンネリーゼはその視線に気が付かない。


「婚約者候補殿のおかげかな?」

「私もランドルフ様のおかげで、ずいぶん探偵に近づきました」


 聴覚は働いていたようで、静かにはっきりアンネリーゼは答えた。

 研究室の端に控えるエリヤは、アンネリーゼの鈍感ぶりを頼もしく思う。


「僕は教え子が優秀だから楽しいよ」

「では、先生。早速ですが一緒にカミーユさんに会ってください」

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