親族
「大伯父の妻がジャンヌさんでした。結婚する報告を受けた時に一度会っただけなので、彼女がお嬢様の探すジャンヌさんである確証はありません。ですが背の高い、凛とした女性だったのを覚えています」
幼い心に、その女性の鮮烈な美しさに驚いたことをエリヤは覚えていた。
年の頃も、おそらくクラリスに近い。
「大伯父さんの奥さん……?」
エリヤの親戚ということは、ブラントの親戚でもある。しかしブラントは首を傾げていた。
「父の伯父だから、ほとんど会うことはない。私が会ったのもまだ私の母が生きていた時だ」
ブラントに説明するエリヤはちゃんと兄に見えて、アンネリーゼは新鮮さを覚えた。
同時にこの兄弟の情報をひとつ得る。
(お母さんが違いますのね)
それにしてもよく似ているのは、父方の血が濃いのだろうか。
「もしもその方で間違いないようでしたら、お住まいはどちらですか?」
「ブラントの実家からそう遠くないと思います」
エリヤの家でもあるのに、ブラントの実家だと言う。エリヤの複雑な感情が顔をのぞかせた。
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王宮に戻ったランドルフ王子は早速、執事のエルキュールに祖父の結婚前から親しい人か、グラーツ公爵と話したいと告げた。
「それはどういったご要件ででしょうか?」
「アンネリーゼさんと、お祖母様からの依頼を調べている。その過程に出てきた、ジャンヌさんと言うグラーツ公爵家の令嬢の現在を知りたい。お祖父様とお祖母様がたいへん親しくしていた方だそうだ。ブラントの大伯父と結婚して、そちらにいるかもしれない」
「かしこまりました」
エルキュールは姿勢良く一礼する。
小一時間もすると、グラーツ公爵が王宮に急いでやって来た。先代もまだ存命だが、今回は当主になった息子が来た。
祖父の代は親しかったが、代替わりした現在は特に仲が良くも悪くもない関係だ。それでも王子の呼び出しとなれば血相を変えて馳せ参じた。
ランドルフ王子も謁見の間へ行き、グラーツ公爵と対面する。
「叔母が何かいたしましたか?」
「その方のお名前はジャンヌさんで間違いないでしょうか?」
「はい」
グラーツ公爵は緊張しながら深くうなずく。
「祖母と仲が良かったとうかがいました。今はどうなさっているのかを知りたいだけです」
ランドルフ王子の言葉を聞いて、グラーツ公爵はほっと胸を撫で下ろした。
「そうでしたか。実は私が生まれる前から叔母はずっと旅に出ており、ほとんど会ったことがございません」
甥がほとんど会ったことがないのだから、周囲はもっと会ったことがないだろう。
祖父母との間にやはり何かあったのだろうかとランドルフ王子は勘繰ってしまう。
「二十年近く前に西の国境付近に住む方と結婚したと聞いたきりでございます。その前もその後も、特に連絡はございません」
「ありがとうございます。ご足労いただき、申し訳ございません」
ランドルフ王子に礼を言われ、グラーツ公爵は恐縮した。




