約束
アンネリーゼが実験道具の片付けをしている最中、ランドルフ王子が護衛のふたりと一緒にやって来た。
「お忙しいのに、どうなさいましたか? 誰かに見つかったらまた騒ぎになりますよ」
まだ午前中で、一般生徒たちもたくさんいる時間帯だ。
「アンネリーゼさんに会いに来たと言ったら、みんな喜んで通してくれたよ」
アンネリーゼをランドルフ王子の婚約者候補と言ったことに、こんな使いみちがあったとはとアンネリーゼは驚いた。
「何かわかったことがあればと教えてもらいたかったのと、私にできることはないかを聞きに来たんだ」
「ありがとうございます。ちょうどいろいろお願いしたいことがありました」
アンネリーゼにそう言われて、ランドルフ王子の顔がパッと明るくなった。
まるで主人に構われて喜ぶ犬のようだとクリストハルトはにこにこしながら様子を見ている。
「お預かりした小瓶の中身を作ったのは、カミーユさんと契約していたとか言うあの男性です」
あの男性が関わっていると言われ、ランドルフ王子は整った眉根にシワを寄せた。
「あの男、一体何者だ?」
アンネリーゼは左右に首を振る。
「今のところ手がかりがカミーユさんの話しかありません。気は進みませんが、収監中のカミーユさんに話を聞くしかないでしょう」
「……そうか。私も同席する。こちらで都合をつけておく」
「ありがとうございます」
アンネリーゼは父に話をつけないといけないと思っていたので、ひとつ肩の荷が降りた。
「ですが、よろしいのですか?」
アンネリーゼに問いかけられ、ランドルフ王子は小さく首を傾げる。
「カミーユさんは……」
「あの者はおそらく、私がいた方が舌が滑らかに動く」
ランドルフ王子がそこまで考えていたことに、アンネリーゼは目を丸くした。
アンネリーゼにじっと見られていることに、ランドルフ王子は照れてしまった。
「お、お祖母様のお願いを聞いてもらっているのだから、当然のことだ!」
ランドルフ王子は照れ隠しにそっぽを向く。行動してから、王子は内心後悔していた。
「ありがとうございます。それから、クラリス様にもっと詳しく話をうかがいたいのです」
「お祖母様はもうすぐ出発なさる。今から行けば少しは話せるかもしれない」
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王立研究院から馬を走らせ、公務に出発する寸前のクラリスに会うことができた。
「お出かけになる前にスッキリしたいと仰言っていたのに、解決できず申し訳ございません」
クラリスにまだ調べなければならないことがあるとアンネリーゼは頭を下げた。
「謝らないで。あなたにお願いできたから、それで私は本当に心が軽くなったわ」
「クラリス様がご結婚なさる前に、ご自宅やお部屋に自由に出入りできた方を何人かお教えいただけますか?」
「ちょっと待っていただける?」
クラリスは隣にいる従者に紙とペンを頼む。
したためたメモをアンネリーゼに手渡した。
「どんな結果が出ても、隠さず教えてくださいね」
アンネリーゼを見つめるクラリスの瞳には覚悟が宿っていた。




