ランドルフ王子の来襲 4
「人違いなんてするわけがない!」
カミーユは怒鳴った。それでもカミーユを開放しないエリヤはさすがだ。
「あなたには特別な力があるって。だから僕は王立研究院の特待生になれたし、軍の魔法部隊にも入った!」
「私にそんな権限はないよ」
「でも、何か特別な魔法で……」
ばっさり切り捨てたクリストハルトに、カミーユは弱々しい声でなおも追いすがる。
その間にエリヤは魔法を封じる手錠を後ろ手にカミーユにかけた。
「特別な魔法が何かわからないけれど、私はあなたに会ったのは今日が初めてだよ」
「うそだ!」
「うそじゃないよ」
突如、部屋の真ん中に現れたローブ姿の男性。自然に彼に視線が集中する。
確かにカミーユの言っていた通り、クリストハルトとうり二つだ。
しかしよく見ると瞳の色が違うし、声も少し違う。人を喰ったようなクリストハルトの態度に比べると、幾分物腰が柔らかい。
「初めましてだね」
男性はニッコリとクリストハルトに笑いかけ、部屋の中にいる人物をぐるりと見渡す。
「こんなに大勢の前に出られたのは久しぶりだよ。ありがとう、カミーユ」
「そんな、バカな……」
「双子でもないのにこんなに似ていたら、間違っても仕方ないよ」
間違いを認められず取り乱すカミーユを、謎の男は慰める。
「あなたはどこから来たのかな?」
「次元の狭間って言ったら信じてくれる?」
同じ顔が互いに腹の底を見せない微笑を浮かべて対峙する。
「うそだと断じることのできる証拠を持ち合わせていないから、とりあえず信じるよ。目的は?」
「特にないよ。呼ばれたから来ただけ」
ランドルフ王子はこの闖入者にあっけに取られていた。アンネリーゼは澄ました顔をしているが、魔法紋の液をかけたくてうずうずしている。
「いつもみたいに助けて……!」
「あー、なんかね、カミーユとの契約は切れちゃったみたいなんだ。ごめんね」
端正な顔の前に右手を立て、本当に悪いとは思っていない軽やかな口調で男性は告げる。
あっさり切り捨てられたカミーユの顔に絶望が浮かんだ。全身から力が抜け、エリヤが支えざるを得なくなる。
アンネリーゼは本来の目的を思い出し、カミーユの前に立った。
「あなたはギデオンさんを魔法で殺害しましたね?」
こんなときでも冷静に対応できるアンネリーゼがランドルフ王子は頼もしく思う。
「何の話だ?」
「あなたが五人、魔法で殺害したと言う話です」
アンネリーゼの淡々とした言葉をカミーユは鼻で笑い飛ばした。
「何の証拠があって……」
「先ほど取らせていただいた魔法紋です。全く同じ紋がこれがアルタウス男爵の遺体から発見されました。心臓だけに穴が開いていました」
「そんなヤツ知らない」
「ソイツよ!」
シルバーに連れられ現れた、憔悴しきった女が叫んだ。




