ランドルフ王子の憂鬱 11
「なによ! どうしてその子だけランドルフ様に会えるのよ‼」
「誤解だ。アンネリーゼさんの研究に協力してもらうだけだ」
「田舎モンだけずるいズルいズルイ‼」
地団駄を踏んだり髪を振り乱して抗議するなど、フロランスのおよそ品の良いとは言い難い言動にレイモンドは困り果てた。
同じ伯爵令嬢でも、フロランスとアンネリーゼは信頼度が違う。
この突拍子のなさや感情のコントロールができない様子は、ランドルフ王子を目の前にしたら何を仕出かすかわからない。
「ランドルフ様に私の努力を聞いていただきたいわ! 私ほどランドルフ様と結婚するためにがんばっている者はいないと思うもの! 今はまだ未熟ですけど、魔法も練習しているの。すぐにその変人なんて追い抜いてやるわ! すごいことをしているんだから!」
興奮しているのか、目が完全に常軌を逸している風にレイモンドには見えた。フロランスは自分で自分に酔っている。
「ランドルフ様! 見ていてくださいね! そして私を妻として迎えにいらして!」
アンネリーゼの実験室の中にいるランドルフ王子に対して叫ぶ。
高揚しているのか、高笑いしながら去っていった。
実験室の中でランドルフ王子は青い顔をしていた。フロランスの声はなぜかランドルフ王子の背筋を寒くする。
嵐がひとつ過ぎ去って、レイモンドは疲れたと肩を落とした。
「もんげーお嬢様だべな」
フロランスの背中を見つめる少女は無邪気な感想を述べていた。
いろいろ言いたいことがあったが、レイモンドはぐっと飲み込む。
少女に少し待っていてもらうように言って、レイモンドは実験室へ戻った。
レイモンドはアンネリーゼに少女の話が気になる旨を告げ、話を聞いてもらえるか確認する。
(もしアルタウス男爵の件につながれば運が良いし、つながらなくても面白そうだわ。謎の占い師なんて、いかにも怪しいもの)
アンネリーゼはふたつ返事でレイモンドの申し出を了承した。
レイモンドはランドルフ王子と少女を会わせない方が良いと考えていて、ブラントに指示を出す。
護衛たちの見事な連携により、ランドルフ王子は少女と顔を合わせることなく実験室を出た。今日のところはブラントと一緒に一度王宮に戻る。
レイモンドと共に実験室に入ってきた少女はアンネリーゼを見て目をキラキラ輝かせた。
「お人形みたいだべ」
少女はポレットと名乗った。
「その占い師とはどちらで出会ったのですか?」
「王都のことは全然わからなくてなー。なんか、薄ぐれぇ場所だったんだ。怖い男の人に声かけられて、腕引っ張られて、怖くて泣いてたら助けてくれたんだ。ローブで顔まで隠してたけど、もんげーきれいな声でな。女神さまかと思ったべ」
身振り手振りを交えて饒舌に話すポレット。レイモンドの言った通り、娼館の集まる一角でのことだろう。
(アルタウス男爵のことで探りを入れに行くつもりでしたから、ポレットさんの会った占い師も探してみましょう)
アンネリーゼがそんなことを考えている間も、ポレットのおしゃべりは止まらない。
「助けてくれた上に、占いまでしてくれたんだべ! 街をきれいに掃除すれば良いことが起こるって。だから毎日掃除してるべよ」
ポレットは声を弾ませ、満面の笑みを浮かべる。
「ロロン王国で一番美しい王子様やそのお付きの人や婚約者さんに会えるなんて、ホント嬉しいべ」




